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「わ…私やっぱり帰ります」
回れ右、をした私だったけれど、繋がれたままの手が帰らせてはくれなかった。
「今日の目的はここなので、帰られては困ります」
相変わらず微笑んだまま、浩人さんは私を連れてお店の中へと入っていく。
(目的って…)
連れてこられたのは、高校生の私が行くような店ではない高級洋服店。
並んでいる服は明らかに普段服じゃなかった。
「何を買うんですか…」
「真琴様のドレスです」
「…帰る!」
「いけませんよ」
「…ドレスなんていらないですから」
逃げようとして、でも繋いだ手を引き寄せられて距離を縮められる。
さらに浩人さんは腰に腕を回した。
洋画で見たことある、パーティーでのエスコートと同じ動作をされる日が来るなんて、思いもよらないことに頭が混乱する。
「おじい様から、真琴様のドレスを見立ててこいと仰せつかったのです」
この体勢は、近すぎる。
体は思ったよりもくっついているし、浩人さんの声がすぐ耳元で聞こえる。
「そんなの、いつ着るんですか…」
「何度も機会はありますよ」
顔を背けて、顔が熱いのを自覚する。
これは仕事。彼にとってはただの仕事だ。
「いらっしゃいませ」
腰に手を添えられて店に入れば、きれいな店員さんが歩いてくる。
「東堂です」
すぐ近くで浩人さんの声が響いて、触れる体温が慣れなくて顔が熱い。
こんなにドキドキしてるのは、仕方がない。
だってこの状況はおかしすぎる。
(こんな非日常、ついていけない…!)

