えっ…なんで。どうして。
怒って…る?
「こんなに近付いて、さ」
すっ、と顔が近づく。
思わず逃げた体は簡単に引き寄せられた。
逃げることなんてできない。
「写真、撮るなら普通このくらいです…」
「同性なら、ね」
分からない。
なんで浩人さんが何にこだわるのか。
怒ってる?なんで?
「部長は、大丈夫です…」
「何が大丈夫?」
「疑うようなことはありません」
「あったら困るよ」
ふっ、と浩人さんは笑った。
だけどその目は、鋭い。
「仮にあったら、許さないかな」
さらりと言って、微笑む。
その表情がセリフと合ってなくて、少し怖くなった。
「許さないって…」
「真琴はともかく、彼のことは許さないよ」
「…この人は部長です。それ以上はありません」
許さない…という意味で怒っているのかな。
そう思って、否定を繰り返す。
「うん。何もないのは分かってるよ」
じゃあ、なんで。
浩人さんの返しに、また疑問が浮かぶ。
「真琴は危機感がないんだよ」
また言われた。でも、そう言われても、何をどう気をつけたらいいのか分からない。
「分かる?」
「…分からないです」
正直に首を横に振れば、浩人さんは1つ息をついて、後ろから回していた手の力を緩めた。
真横に座るように言われて大人しく従う。
浩人さんは私と肩がギリギリ触れる距離に座り直し、こちらを見る。
「ほら、近い」
確かに近い…けど。
ぴったりとくっついてるわけじゃない。
意識して、ドキドキするけど、それは浩人さんだから。
相手が浩人さんだと意識してしまう距離。
浩人さん以外の男の人だと、そうそうない距離…でも写真を撮るためには許されるはず。
浩人さんは許してはくれないみたいだけど。

