ふと、携帯電話の着信音が響いた。
浩人さんが携帯電話を持ってきているかは分からないけど、音からして私の着信音だ。
「電話…ではないみたいだね」
すぐ鳴り止んだ音に、浩人さんが呟く。
(たぶん、今日の大会で撮った写真とか送ってくれたんじゃないかな…)
大会があった日の夜にはよくあることだ。
「何か大事な連絡かもしれないから見ておいで」
端末はベッドの上で、ソファからは少し距離がある。
浩人さんの言葉に甘えて端末のところまで行くと、『おつかれ!』というメッセージとともに写真が送られてきていた。
知らない間に撮られていた写真も混じっていて、思わず画面を見ながら笑ってしまう。
「何?楽しそうだね」
「今日の大会での写真、送ってくれたんです」
「俺にも見せて?」
少し恥ずかしい。
ソファで手招きする浩人さんを見つめてみるけど、そのまま伝えたところで聞き入れてはもらえなそう。
端末を手に近くまで寄ると、腕を引かれて浩人さんの足の間に誘導される。
「えっ…ちょ、なに…」
膝の間に座って、後ろから抱きしめるように腰の辺りをホールドされて、私はピシッと固まった。
「な、なに…」
「はい、見せて」
浩人さんの腕から逃れようと、ぐいぐいと腕を引っ張ってみるけどビクともしない。
それどころか私の抵抗を物ともせず、さらに腰を引き寄せられて密着度が高まった。
カッと頭が熱くなって、心臓がばくばくと音を立てる。
逃れるすべもなく、端末を両手で握りしめるしかない。
痛いくらいにドキドキしている胸を深呼吸でおさえ、浩人さんに言われるままに画面をスクロールしていく。
「袴姿、新鮮だね」
「そういえば、浩人さんは見たことないですね…」
「着て見せてほしいな」
「っ…、嫌ですっ」
「お願い」
わざとらしく耳元に口を寄せて、浩人さんが囁く。
びくっと肩を震わせて身をひねるけど、逃げることはできなかった。
「絶対に嫌です…」
「残念だな」
クスクスと、後ろで浩人さんが笑っている。
完全に翻弄されて頭がオーバーヒートしている私を面白がっているに違いない。

