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「どうして私服なんですか?」
「なんとなく」
「……え」
反応に困る私の横で、浩人さんはにこにこと楽しそうにしている。
からかわれてるのかな…。
何がしたいのかよく分からない。
いや、浩人さんが何を考えてるのか分からないのはよくあることだけど。
「それより、入賞おめでとう」
「さっき言ってもらいましたよ?」
「あれは執事として。これは俺個人として」
「…ありがとうごさいます」
当然のように言われて、俯きがちに頭を下げた。
ふっ、と笑う声が聞こえて顔を上げると、なぜか浩人さんが小さく笑っている。
その行動の意味が分からなくて呆然と見つめると、浩人さんが口を開く。
「祝われるのは苦手?」
なんで分かるんだろう…。
「苦手、です」
「褒められるのも苦手だよね」
「はい…」
なんで知ってるの…と絶句して、目の前の人を見つめる。
そんなに分かりやすく表情がこわばっていたのかと、不安になる。
「分かりにくいけど、表情がぎこちなかったからね」
「ぎこちない…」
分かりにくい、という言葉にほっと息をつく。
でも、だったらなんで浩人さんは気づいたのか…。
「照れくさいとか?」
「照れくさい…というか申し訳ない、ですね。嬉しいには嬉しいですけど」
「申し訳ない…か」
浩人さんは考え込むような素振りをする。
「不思議な考え方するね」
「そうですか?…まぁ、そうかもしれないですね」
「もっと自信持っていいのに」
自信……持てたらいいんだけど。
「謙虚なところが真琴の魅力でもあるけどね」
「な…んですか、それ…」
不意打ちの言葉に、顔が熱くなる。
いきなり何を言い出すの、この人は。
さらりと言ってのける本人は、まるで私の反応が分かっていたように笑う。
それが悔しくて、少し顔をそらした。
「こっち向いて、真琴」
「…嫌です」
「真琴」
優しくて、でも拒否を許さない。
そんな風に言われると私が拒否できないことを、この人は分かっているんだ。
「ん、いい子」
目線は微妙にそらしたまま顔を向けると、伸びてきた手に頭をなでられる。
それは子供扱いされているみたいなのに、なぜか嬉しくて。
嬉しいのが悟られないように、顔を下げた。
「今日は頑張ったね」
よしよし、と。さらに子供扱いされる。
でもやっぱり嬉しくて、どんなお祝いの言葉よりも欲しかった言葉かもしれない。
私、こう言ってほしかったのか…と自分で気づいた。
「やっぱり妹気質だね」
「え…?」
「今、嬉しいでしょ?」
誰だってそういうものじゃないの…?
「おかしいですか?」
「ううん、かわいい」
「…それ、答えになってないですよ」
そうかな?と浩人さんはおどけてみせる。
また、自分の顔が熱くなるのを自覚した。

