Please be absorbed in me




***


お風呂に入って、夕食も終えて、今日はなんの予定もないからベッドに飛び込んだ。

宿題は明日やればいいし、少し疲れているから何もやる気が起きない。

とはいえ、寝るにはまだ早すぎる。



……浩人さんのところ行ってもいいかな。



たしか、浩人さんも予定は入ってないはず。

今は自分の部屋にいると思う。



「……」



会いたい。

こんなに何もない日は貴重で、この先しばらく忙しくなるかもしれない。


勢いでベッドから起き、自分に言い訳をしながら廊下へと続く部屋のドアを開けた。




「おっ…と、びっくりした」




扉を開けると浩人さんがいて、開けたドアの先で浩人さんは目を大きくした。

思ってもみない状況に、私の思考は停止する。




「……」

「お邪魔していい?どこか行くつもりだった?」




固まっている私を、浩人さんが覗き込む。

会いに行こうとしたら、向こうも会いに来てくれたらしい。

ようやく状況を飲み込むと、心臓がばくばくと音を立て始めた。


だって、会いたいと思ってた人が突然現れるって心臓に悪い。

自分で会いに行く方が、心の準備ができる分いいかもしれない。



「真琴?」

「あ、はいっ。どうぞ…」



しかも既に“浩人さん”だ。

執事としてじゃない、恋人として。


こうやって私を翻弄していることに気づいているのかいないのか。

頭の回転が早いこの人なら、気づいてるんだろうな…と、招き入れた浩人さんの背中をなんとなく睨んでみた。



「どこか行くつもりじゃなかったの?」



ドアを閉じた私を振り返って、浩人さんが言う。

その姿に、今度は私が目を大きく見開いた。

私はかなり動揺していたらしい、と自分に絶句しながら、思わず浩人さんをじっと見つめてしまう。


浩人さんは私服だった。

この時間帯に私服はすごく珍しい。

というか私服姿が貴重だ。

2人で出かける時は私服だけど、私服で出かけたのは2、3回しかない。


家でのいつもと違う雰囲気に、また心臓がばくばくとうるさくなる。



「真琴?」

「だ…大丈夫です。なんでもなかったので…」



なんだか直視できなくて、微妙に目線を逸らしつつ答える。


それに、「浩人さんに会いに行こうとしてました」なんて言えるわけがない。


なんか、いろいろ恥ずかしくて目を合わせられない。


私服姿も、自分が会いに行こうとしてたことも、全部が作用して顔が熱い。



「そっか」



楽しそうに笑う浩人さんに手を引かれて、ソファへと向かう。

腰を下ろして、横から優しく触れた手が私を引き寄せて、軽く唇が重なった。



「今日はゆっくりできるね」



近くで、優しく笑うのは反則。


近すぎる距離にめまいを感じながら、その言葉に小さく頷いた。