Please be absorbed in me




*


「どうして私服なんですか?」

「なんとなく」

「……え」



反応に困る私の横で、浩人さんはにこにこと楽しそうにしている。

からかわれてるのかな…。

何がしたいのかよく分からない。


いや、浩人さんが何を考えてるのか分からないのはよくあることだけど。




「それより、入賞おめでとう」

「さっき言ってもらいましたよ?」

「あれは執事として。これは俺個人として」

「…ありがとうごさいます」



当然のように言われて、俯きがちに頭を下げた。


ふっ、と笑う声が聞こえて顔を上げると、なぜか浩人さんが小さく笑っている。

その行動の意味が分からなくて呆然と見つめると、浩人さんが口を開く。



「祝われるのは苦手?」



なんで分かるんだろう…。



「苦手、です」

「褒められるのも苦手だよね」

「はい…」



なんで知ってるの…と絶句して、目の前の人を見つめる。

そんなに分かりやすく表情がこわばっていたのかと、不安になる。




「分かりにくいけど、表情がぎこちなかったからね」

「ぎこちない…」



分かりにくい、という言葉にほっと息をつく。

でも、だったらなんで浩人さんは気づいたのか…。



「照れくさいとか?」

「照れくさい…というか申し訳ない、ですね。嬉しいには嬉しいですけど」

「申し訳ない…か」



浩人さんは考え込むような素振りをする。



「不思議な考え方するね」

「そうですか?…まぁ、そうかもしれないですね」

「もっと自信持っていいのに」



自信……持てたらいいんだけど。



「謙虚なところが真琴の魅力でもあるけどね」

「な…んですか、それ…」



不意打ちの言葉に、顔が熱くなる。

いきなり何を言い出すの、この人は。


さらりと言ってのける本人は、まるで私の反応が分かっていたように笑う。

それが悔しくて、少し顔をそらした。



「こっち向いて、真琴」

「…嫌です」

「真琴」



優しくて、でも拒否を許さない。

そんな風に言われると私が拒否できないことを、この人は分かっているんだ。



「ん、いい子」



目線は微妙にそらしたまま顔を向けると、伸びてきた手に頭をなでられる。


それは子供扱いされているみたいなのに、なぜか嬉しくて。

嬉しいのが悟られないように、顔を下げた。



「今日は頑張ったね」



よしよし、と。さらに子供扱いされる。


でもやっぱり嬉しくて、どんなお祝いの言葉よりも欲しかった言葉かもしれない。

私、こう言ってほしかったのか…と自分で気づいた。




「やっぱり妹気質だね」

「え…?」

「今、嬉しいでしょ?」



誰だってそういうものじゃないの…?



「おかしいですか?」

「ううん、かわいい」

「…それ、答えになってないですよ」



そうかな?と浩人さんはおどけてみせる。


また、自分の顔が熱くなるのを自覚した。