駅前の通りに並んでいる洋服や雑貨のお店をのんびりと見て回る。
浩人さんを私の買い物に付き合わせているのは少し心苦しいけれど、引っ越し準備や部活で何かと慌ただしくしていて、久しぶりのショッピングに思わず夢中になってしまう。
(あ、この服いいなあ)
気に入ったワンピースを手に取り、体に合わせて、サイズや色味を鏡で見てみる。
それから値札を見てみると、セールで30%オフになっていた。
(よし、買っちゃおう)
レジに向かおうと、お店の出入り口の方に足を向けたところで、浩人さんが陳列棚の間からスッと現れた。
「購入されますか?」
「はい、これを買います」
さっきまで向こうの方にいたはずのに、いつの間にこっちに来たんだろう。
そんなことを考えながら、浩人さんのを見つめていると、私の手からするりとワンピースがなくなる。
手品みたいに私の手からワンピースをとった浩人さんが、気づいたらレジに向かっていた。
「自分で買います」
浩人さんの服の袖を掴むと、優しく笑いかけられる。
「お祖父様からのプレゼント、ということでお金を預かっております」
プレゼント。
そんな風に言われたら断りにくい。
私のお小遣いで買えるのだから、お祖父様にとっては大したことではないのかもしれないけれど。
(明日、ちゃんとお礼を言おう)
「次はどこに行きますか?」
会計を済ませた浩人さんは、紙袋を片手に尋ねる。
「ありがとうございます」
紙袋を受け取ろうと手を伸ばすと、その手は浩人さんの手にそっと掴まれた。
「お持ちいたします」
「自分で持ちます」
「私の仕事です」
「でも…」
「では、人が多くなってきたので、私の腕を持っていてください」
にこり、と浩人さんは笑う。
想像もしてなかったその返しに、私の思考は一瞬止まった。
「…い、いえ。大丈夫です、必要ありません」
「私が大丈夫ではありません」
掴まれた手を引っ込めようとすると、逆に私の手が浩人さんの方に引っ張られて、浩人さんの腕に絡める形にされる。
まるで、恋人がするみたいに腕を組んでいた。
近い。
そう思って絡めた腕を離すと、また浩人さんに逃げた手を掴まれて、顔を覗き込まれる。
「腕を組むのと、手を繋ぐのと、どちらがよろしいですか?」
(なに、その2択…)
どちらも大して変わらない。
「…どっちも嫌です」
「では、私のいいように」
そう笑って、浩人さんは私の手に指を絡めた。
手を繋ぐ。しかも恋人繋ぎ。
顔が熱くなる。
だって、こんなの初めてで、どうすればいいのか分からない。
(なんでこんなことするの?)
年上で、私よりも経験値があるだろうから、手慣れているのは分かる。
浩人さんほどのイケメンが手慣れているのも頷ける。
ただ、一つだけ理解できない。
どうして、私にこんなことをするのだろう。
浩人さんは、私をどうしたいのだろう。
(これは執事の仕事だ。きっと、そう。それだけ)
きっと、浩人さんには、私が手を繋いでいないと迷子になりそうな思えたんだ。
そんな風に自分に言い聞かせて、繋がれた手から目を逸らした。

