Unusual life


「お父さんとお母さん、海外に住むことにしたの」


それは、仕事のため、定期的に海外と日本を行ったり来たりしている両親が夕飯の席で言った言葉だった。

唐突な言葉に驚いて、だけど、あまり考えることなく、私は言葉を返す。


「私は行かないよ?」

「そう言うと思ったけど…」

「そうなると、おじい様の所に行くことになるけどいいのか?」

「え…」


お父さんの言葉に思わずかたまる。

正直行きたくない。
祖父は海外を拠点にビジネスをする会社の社長で、父はいわば御曹司で、あの家はかなり現実離れしている。


「おじい様の所…」


小さい頃に何度か行ったことがある、おじい様のお屋敷を思い返す。

(学校の人にあの家に帰るところを見られるのはいやだな…)

「一緒に来るか?」


2人の言い方から、一人でこの家に残るという選択肢は選べそうにない。
それなら、転校するのも海外に行くのもいやだ。

私は首を横に振る。


「おじい様の所に行く」

「わかった、おじい様には話しておくわ」


春休み中には引っ越しね、と母が付け足す。
ちょうど今日、高校1年目の修了式をしたばかり。
引っ越しはもう目先のことだった。