彼女がそっと恭弥の腕に手を添えた。
「傷口を拭くからガーゼとお湯を持ってきて」
彼女の指示に、恭弥は「わかった」と答えて台所へ向かう。
恭弥の身体に触れる彼女の仕草も、それを受け入れる恭弥の態度も、全てがあまりに自然で、普段からそういう関係の二人なんだと分かった。
何の躊躇いもなく彼に触れるなんて、私にはとても出来ない。
私と恭弥より、彼女と恭弥の方がずっと近いところにいる。
なんだか悔しくて、そして哀しかった。
リビングに初対面の私と彼女が残されてしまって、どことなく緊張した雰囲気が漂う。
彼女は私に気を使ってくれたのか「お母さんに似て可愛くなりそうね」そう言って場を和ませてくれた。
私が彼女へ話を振ろうとして
「あの、えっとー……」
彼女の名前をまだ聞いていないことに気づき、そこで言葉が止まってしまった。
「……ああ、私、里香って言います」
察した彼女が遅めの自己紹介をしてペコリと首を傾けた。
「妹の、沙菜です」
私は正座を崩さずに、深々とお辞儀をする。
「うん、沙菜さん、恭弥から話は聞いています」
里香さんは含んだような笑みを浮かべた。まるで、あなたの良いこと悪いこと、なんでも聞いていますよとでもいうように。
「あの、里香さんは、恭弥の……ご友人ですか?」
いきなり彼女ですか? とは聞けなくて、濁してみたらおかしな質問になってしまった。
友人か彼女か、それ以外に何があるというんだ。要するに彼女ですかと聞いているようなものだ。
なんて不躾な質問をしているんだ私は。
慌てて顔を赤くした私に里香さんはまたしても意味ありげな笑みを浮かべる。
「今はね」
少しだけ挑発的な表情で笑って、里香さんは目を細めた。
「傷口を拭くからガーゼとお湯を持ってきて」
彼女の指示に、恭弥は「わかった」と答えて台所へ向かう。
恭弥の身体に触れる彼女の仕草も、それを受け入れる恭弥の態度も、全てがあまりに自然で、普段からそういう関係の二人なんだと分かった。
何の躊躇いもなく彼に触れるなんて、私にはとても出来ない。
私と恭弥より、彼女と恭弥の方がずっと近いところにいる。
なんだか悔しくて、そして哀しかった。
リビングに初対面の私と彼女が残されてしまって、どことなく緊張した雰囲気が漂う。
彼女は私に気を使ってくれたのか「お母さんに似て可愛くなりそうね」そう言って場を和ませてくれた。
私が彼女へ話を振ろうとして
「あの、えっとー……」
彼女の名前をまだ聞いていないことに気づき、そこで言葉が止まってしまった。
「……ああ、私、里香って言います」
察した彼女が遅めの自己紹介をしてペコリと首を傾けた。
「妹の、沙菜です」
私は正座を崩さずに、深々とお辞儀をする。
「うん、沙菜さん、恭弥から話は聞いています」
里香さんは含んだような笑みを浮かべた。まるで、あなたの良いこと悪いこと、なんでも聞いていますよとでもいうように。
「あの、里香さんは、恭弥の……ご友人ですか?」
いきなり彼女ですか? とは聞けなくて、濁してみたらおかしな質問になってしまった。
友人か彼女か、それ以外に何があるというんだ。要するに彼女ですかと聞いているようなものだ。
なんて不躾な質問をしているんだ私は。
慌てて顔を赤くした私に里香さんはまたしても意味ありげな笑みを浮かべる。
「今はね」
少しだけ挑発的な表情で笑って、里香さんは目を細めた。


