「沙菜!」
私の名前を叫びながら、恭弥が血相を変えてリビングへ飛び込んできた。
そんな恭弥の目に映ったものは――。
「ぱっぱー」
あどけない表情でカーペットの上に座り込んで積み木を積んでいる心菜の姿。
が、その鼻と唇は腫れあがり、大きなかさぶたができていた。
恭弥は目の前の心菜を呆然と見つめたあと
「……なんかすげー痛々しいけど、とりあえず元気そうで安心した」
大きなため息をひとつ溢して、安堵の情けない笑みを浮かべた。
「ごめん恭弥、大袈裟な電話して」
「……びびらせんなよ、全く」
恭弥は、心菜の頭に手を乗せて髪をくしゃくしゃにして撫でたあと、何故か隣に座り込んでいた私の頭までぐりぐりとかき混ぜた。
「と、」
恭弥が何かを言いかけて、廊下の方に視線を移した。
つられて私もそちらを見ると
「……もう私は必要ないかしら?」
廊下の奥から聞き覚えのない女性の声がした。


