買い物を終えた私たちはエスカレータを使って地下駐車場へ向かった。
エスカレータは一階で途切れていて、仕方なく地下へと続くエレベーターを探してさ迷った。
ふと、恭弥が携帯端末の画面を確認する。彼が時間を気にしているときの仕草だ。
「少し、歩いてから帰るか」
そう言うと、私が持っていた紙袋を黙って奪い取った。あっ、と小さく呟く私を無視して、恭弥は正面玄関から外に出る。
建物を出た瞬間、潮の香りを含んだビル風が私たちの身体を打ちつけた。
秋の風はひやりと冷たくて、私は小さく肩をつぼめる。
そんな私の様子を見ていた恭弥がこちらに向き直る。
「寒い?」
ううん、と私が首を横に振ると、彼は再び黙って歩き出した。
海と夜景が見えるその歩道は、格好のデートスポットだった。
あたりを見渡すと、カップルがもつれ合いながら楽しげに歩いている。
綺麗な風景よりも、どちらかというとそちらの方に気を取られてしまう。
そんな仲、距離を空けて歩く私たちは場違いだろうか。
恭弥は周りを気にする様子もなく、迷いなくすたすたと歩みを進める。
それでも、いつもより歩くペースを落としているところから見て、一応気は使ってくれているらしい。
私から見たら『すたすた』でも、彼からしたら『のんびり』なのかもしれない。
彼の足は長いから、普通の速度で歩かれたら私はとても追いつけない。
漠然とした優しさを感じながら、一歩後ろを歩いていると
ふと、恭弥が振り返った。
「お前さぁ、なんで下がんの」
「え?」
恭弥が私のいる位置まで一歩下がってきて、真横に立つ。
「いつも俺の後ろにくるよな。隣は嫌なの?」
不満なのだろうか、不機嫌に責め立てられて、私は口ごもる。
「そんなわけじゃあ……」
エスカレータは一階で途切れていて、仕方なく地下へと続くエレベーターを探してさ迷った。
ふと、恭弥が携帯端末の画面を確認する。彼が時間を気にしているときの仕草だ。
「少し、歩いてから帰るか」
そう言うと、私が持っていた紙袋を黙って奪い取った。あっ、と小さく呟く私を無視して、恭弥は正面玄関から外に出る。
建物を出た瞬間、潮の香りを含んだビル風が私たちの身体を打ちつけた。
秋の風はひやりと冷たくて、私は小さく肩をつぼめる。
そんな私の様子を見ていた恭弥がこちらに向き直る。
「寒い?」
ううん、と私が首を横に振ると、彼は再び黙って歩き出した。
海と夜景が見えるその歩道は、格好のデートスポットだった。
あたりを見渡すと、カップルがもつれ合いながら楽しげに歩いている。
綺麗な風景よりも、どちらかというとそちらの方に気を取られてしまう。
そんな仲、距離を空けて歩く私たちは場違いだろうか。
恭弥は周りを気にする様子もなく、迷いなくすたすたと歩みを進める。
それでも、いつもより歩くペースを落としているところから見て、一応気は使ってくれているらしい。
私から見たら『すたすた』でも、彼からしたら『のんびり』なのかもしれない。
彼の足は長いから、普通の速度で歩かれたら私はとても追いつけない。
漠然とした優しさを感じながら、一歩後ろを歩いていると
ふと、恭弥が振り返った。
「お前さぁ、なんで下がんの」
「え?」
恭弥が私のいる位置まで一歩下がってきて、真横に立つ。
「いつも俺の後ろにくるよな。隣は嫌なの?」
不満なのだろうか、不機嫌に責め立てられて、私は口ごもる。
「そんなわけじゃあ……」


