私と恭弥と心菜、三人の生活に戻って一ヶ月が経った頃。

私は熱を出した。
滅多に体験することのない四十度という酷い高熱にうなされながら、病院へ駆け込んだものの、結局ただの風邪だと診断された。


「絶対、心菜にうつすんじゃねぇぞ」

そう言って恭弥は私をリビングの隣の寝室に押し込めた。
俺の許可なしにその部屋を出るな。そんな思いやりの欠片もない台詞を吐いて、私を心菜から隔離する。


心菜が産まれてから、初めて一人で寝る夜。
ゆっくり眠れるという開放感を味わえたのは最初だけで、次第に物足りなさが押し寄せてきた。

いつも隣にいるはずのちっちゃな怪獣。
今日は二階で恭弥と一緒に眠っている。
だいじょうぶだろうか。夜泣きをしていないだろうか。
熱で朦朧とした頭でぼんやりしながら、不安な思いを募らせる。


翌朝、隣のリビングからバタバタと音がして、目が覚めた。
全身がじんわりと汗ばんでいて、代わりに夕べのだるさが抜けている。汗をかいて熱が下がったようだ。

リビングへのドアを開けると、恭弥と心菜が出かける準備をしていた。
今日は平日である。
恭弥はスーツに身を包んでいて、心菜は上はお出かけ着、下はパジャマというアンバランスな格好をしていた。
恭弥の手にスカートとレギンスが握られていたことから、今まさにお着替え中――しかも苦戦しているということが分かった。