またしても彼は適当を上書きする。
どうしてそんなに強気でいられるのだろう。
それでも彼のその言葉は頼もしかった。

「……ちゃんとどうにかしてね」

念を押した私に、彼はフッと笑みを溢す。

「どんな形であれ、俺がお前のそばにいることには、変わりないから」

安心しろ、と言って、私を抱く腕に力を込めた。
この身を覆う彼の体温、その温かさに、今、私は大切にされているんだと実感する。


母親になったその日から、自分の幸せは二の次だった。
何は無くとも我が子のため。それは今でも変わらない。

恭弥の一番は心菜でいい。私は二番目で構わない。


それでも、心菜が眠るこのわずかな時間、母親でなく、一人の女性であることを許されるのならば。
ほんの少しの間でいい。私自身を愛して欲しい。


次に心菜が目を覚ますまで、私と恭弥、ふたりだけの時間。


この一瞬を噛み締めるように瞳を閉じた。
どうか今さら恋なんて始めるママを怒らないでね、心菜。