恋は天使の寝息のあとに

「……」

あまりに突然の『愛してる』に、私の身体はまだ反応してくれない。
何の言葉も返すことが出来ない私に構わず、彼は愛の言葉を続ける。


「お前も、心菜も、幸せにするから」


何の気なしに、いつもの気だるそうな声のトーンのまま、彼はとびきりの誓いを立てる。


ワンテンポ遅れて、胸がきゅっと疼いた。

普段は悪態ばかり飛び出してくる彼の口から、こんなに甘くて優しい言葉が紡がれるものかと
信じられない想いで、彼の背中を見つめた。

頬が熱くなって、目頭がぎゅっと締め付けられる。
本当はそのまま泣いてしまいたかったのだけれど、私の涙を見ると恭弥は嫌な顔をするだろうから、ぐっと飲み込んで堪えた。


私は恭弥の背中の裾を引っ張った。何だよ、という風に彼がちらりとこちらへ振り向く。

「今の、ちゃんと目を見て言ってよ」

「嫌だ」

彼は少し不機嫌な声で答えると、再びプイッとどこか遠くに目をやってしまった。


しょうがないなぁと、私は軽く息を吐いた。彼の大きな背中にきゅっと抱きつく。

「じゃあ、また泣いちゃうよ?」

顔を埋めてもごもごと口を開く。
彼の体温が、私の頬に、胸に、お腹に、じんわりと伝わってくる。