恋は天使の寝息のあとに

心菜が呑気にお腹が減ったとぐずりだしたから、昼食を取ることにした。

食べ終わってもまだ正午を過ぎたばかりなのに、それまでの時間が濃密過ぎて、もう丸一日働いたような気分だ。
お疲れ気味の私をよそに、まだ暴れ足りない心菜。せっかくの休日なのだし、どこかへ連れて行ってやらないと可哀想だ。

恭弥が携帯端末の画面で時間を確認しながら、口を開いた。

「三人でどっか遊びに行くか。沙菜、どこ行きたい?」

「……私の行きたいところでもいいの?」

「……ママにも、何かご褒美が必要だろ?」

恭弥が心菜に目配せすると、心菜がわぁっと満面の笑みを浮かべた。まるで、良く頑張ったねと、言ってくれているみたいに。


「ありがとう心菜。でも、心菜の好きなところでいいよ」

「心菜の好きなところか。……水族館行くか?」

「また水族館!? もう四回目だよ? いい加減飽きるんじゃない!?」


それでも心菜はわぁっと手を上げて喜んだから、私たちは水族館を目指し、車に乗り込んだ。
帰ってくる頃にはクタクタになっているだろうけれど、きっとそれは心地好い充足感だ。
本当は場所なんて、どこだっていいんだ。
私と、恭弥と、心菜の三人でいられるのならば。