恋は天使の寝息のあとに

これでよかったのだろうか。


心菜との生活で翔が追い詰められていたのは確かだし、これ以上一緒にいても良い結果を望めなかったことは事実だと思う。
しかし、もっと上手い方法があったのではないかなんて、解決策も分からないまま、ただうしろめたさに支配された。
私が恭弥と一緒にいたいという気持ちだって自分勝手なものだし、結局は最後までわがままを貫き通すことになってしまった。

「翔の言うとおり。私も翔も……失敗だらけだったね」

沈痛な顔でうつむいていると、恭弥が私の隣に身を寄せた。
目線が同じ高さになるくらいまで腰をかがめると、頭にポン、と手を置いて、私の顔を覗き込む。

「心菜を産んだことは後悔していないんだろう?
失敗だったって思わせないくらい心菜を幸せにしてやりゃいい」

目の前にある恭弥の表情がいつにも増して柔らかくて、大丈夫だと言われているような気がして、なんだか少しホッとした。

そうだ。私に後悔している暇なんてない。
全身全霊かけて、心菜を幸せにしてやらなければ。

きっと大丈夫だ。恭弥がそばにいてくれるから。

「ありがとう」

私は彼に触れたくなって、けれど大胆に抱きしめることは出来なくて、申し訳程度に彼の右手の指をそっと握った。
彼が私の手をぎゅっと握り返す。

「ちゃんと自分で、カタつけられたじゃん」

珍しく彼に褒められて、私は照れながらうつむいた。
フッと彼の吐息の漏れた音がする。
ちらりと見上げた彼は、柔和な笑みを浮かべていた。