恐る恐る目を開けると、落胆した翔がそこにいた。
「僕への想いは、もうこれっぽっちも残っていないのか? 愛も、未練も?
もうやり直せないのか? 僕が何を言っても、もう聞き入れてはもらえないのか?」
「……」
言葉にはしなかったが、意思の強い眼差しで翔を見た。
翔がその瞳に絶望を落とす。よろよろとソファへ座る――というより膝の力が抜けたようにがっくりと腰を落とした。
「――確かに今さら戻ってきた僕も身勝手なのかもしれないけれど……
君らも十分勝手だ……」
吐き捨てて頭を抱え塞ぎこんだ。
「……君の言うとおりだ。無理をしていた。
出会ったばかりの心菜を愛してるだなんて、とても思えなかった。
……正直、泣き声に苛々して、殴りたいと思ったこともある」
頭をもたげたまま、苦しそうに彼は呟く。私と恭弥は黙ってその嘆きに耳を傾ける。
「それでも、やり直したいと思っていたことは事実だ!
僕にだって罪悪感はある。自分の子どもまで見捨てて、君と別れたことを本気で後悔していたよ。
責任だって感じていたし、もう一度、君たちを養っていこうっていう決意もあった。
あともう少し時間をもらえれば、心菜のことも愛せるんじゃないかと思ってた」
翔はゆっくりと顔を上げると、私を見て情けなく笑った。
男のくせに、今にも泣き出しそうな弱々しい表情をしている。
「沙菜から見たら、僕は無茶苦茶に見えたのかな。
それでも、やり直したいっていう気持ちは本気だったし――沙菜を愛しているよ」
分かってる。翔は悪人なんかじゃない。不完全なだけだ。
そんな彼に寄り添ってやらない私の方が冷酷なのかもしれない。
別れるという選択は『私が望む選択』であって、『正しい選択』ではない。
私が翔ではなく恭弥を選びたいと思ってしまう気持ちは、言い換えれば翔が別の女性を選んで逃げ出した行為とニアリーイコールなのかもしれない。
「僕への想いは、もうこれっぽっちも残っていないのか? 愛も、未練も?
もうやり直せないのか? 僕が何を言っても、もう聞き入れてはもらえないのか?」
「……」
言葉にはしなかったが、意思の強い眼差しで翔を見た。
翔がその瞳に絶望を落とす。よろよろとソファへ座る――というより膝の力が抜けたようにがっくりと腰を落とした。
「――確かに今さら戻ってきた僕も身勝手なのかもしれないけれど……
君らも十分勝手だ……」
吐き捨てて頭を抱え塞ぎこんだ。
「……君の言うとおりだ。無理をしていた。
出会ったばかりの心菜を愛してるだなんて、とても思えなかった。
……正直、泣き声に苛々して、殴りたいと思ったこともある」
頭をもたげたまま、苦しそうに彼は呟く。私と恭弥は黙ってその嘆きに耳を傾ける。
「それでも、やり直したいと思っていたことは事実だ!
僕にだって罪悪感はある。自分の子どもまで見捨てて、君と別れたことを本気で後悔していたよ。
責任だって感じていたし、もう一度、君たちを養っていこうっていう決意もあった。
あともう少し時間をもらえれば、心菜のことも愛せるんじゃないかと思ってた」
翔はゆっくりと顔を上げると、私を見て情けなく笑った。
男のくせに、今にも泣き出しそうな弱々しい表情をしている。
「沙菜から見たら、僕は無茶苦茶に見えたのかな。
それでも、やり直したいっていう気持ちは本気だったし――沙菜を愛しているよ」
分かってる。翔は悪人なんかじゃない。不完全なだけだ。
そんな彼に寄り添ってやらない私の方が冷酷なのかもしれない。
別れるという選択は『私が望む選択』であって、『正しい選択』ではない。
私が翔ではなく恭弥を選びたいと思ってしまう気持ちは、言い換えれば翔が別の女性を選んで逃げ出した行為とニアリーイコールなのかもしれない。


