「ごめんなさい。私、あなたとはもう一緒にいたくない」
私がうつむいて首を振ると、翔は悲しそうに眉を歪めた。
「君が僕を拒否するのは簡単かもしれない。
でも心菜はどうなるんだ? 彼女には父親が必要だろう?
君一人がどんなに頑張っても、両親二人分は務まらないよ。
心菜に父親のいない寂しさを味わって欲しくないだろう?」
憂いを帯びた彼の滑らかな台詞は、まるで物語に出てくる主人公だった。
その声と仕草で悲劇のシナリオを紡いで、感情に訴えかけてくる。
さも私が悪者であるかのような気分を味わわされる。
私はただただ首を振って彼を拒絶する。
すると、恭弥が一歩進み出て、彼から私の姿を覆い隠してくれた。
「心菜は、俺が育てますんで、ご心配なく」
「……っ!」
恭弥の言葉に、驚いた翔が喉の奥をぐっと鳴らした。
「育てますって……軽々しくそんなことを……」
「本気で、言っている」
鼻で笑い飛ばした翔だったが、冗談を微塵も含まない恭弥の真剣な眼差しから、彼の決意が本物だと悟ったようだった。
「そんなの……無理ですよ」
翔の笑いが凍り付いて、愕然とした表情になる。
「父親と叔父は決定的に違うでしょう。父親の代わりになんかなれるはずが――」
「代わりじゃない。俺が父親になる、って言ってる」
その言葉にハッとした翔が恭弥の身体越しに私を見た。
「まさか沙菜、父親になってくれる人って、お兄さんのことだったのか!?
それは父親とは言わないよ、叔父は叔父だ。どんなに優しくしようとも、近くにいようとも、所詮は――」
「だから、叔父じゃなくて、本当の父親になるって言ってるだろ」
少しばかり苛立った口調で、私の代わりに答えた恭弥に、翔は不信な眼差しを向けた。
「本当の父親? 一体どういう意味ですか。養子縁組でもするつもりですか?」
恭弥は反論しなかった。それを見た翔は、身を凍りつかせる。
私がうつむいて首を振ると、翔は悲しそうに眉を歪めた。
「君が僕を拒否するのは簡単かもしれない。
でも心菜はどうなるんだ? 彼女には父親が必要だろう?
君一人がどんなに頑張っても、両親二人分は務まらないよ。
心菜に父親のいない寂しさを味わって欲しくないだろう?」
憂いを帯びた彼の滑らかな台詞は、まるで物語に出てくる主人公だった。
その声と仕草で悲劇のシナリオを紡いで、感情に訴えかけてくる。
さも私が悪者であるかのような気分を味わわされる。
私はただただ首を振って彼を拒絶する。
すると、恭弥が一歩進み出て、彼から私の姿を覆い隠してくれた。
「心菜は、俺が育てますんで、ご心配なく」
「……っ!」
恭弥の言葉に、驚いた翔が喉の奥をぐっと鳴らした。
「育てますって……軽々しくそんなことを……」
「本気で、言っている」
鼻で笑い飛ばした翔だったが、冗談を微塵も含まない恭弥の真剣な眼差しから、彼の決意が本物だと悟ったようだった。
「そんなの……無理ですよ」
翔の笑いが凍り付いて、愕然とした表情になる。
「父親と叔父は決定的に違うでしょう。父親の代わりになんかなれるはずが――」
「代わりじゃない。俺が父親になる、って言ってる」
その言葉にハッとした翔が恭弥の身体越しに私を見た。
「まさか沙菜、父親になってくれる人って、お兄さんのことだったのか!?
それは父親とは言わないよ、叔父は叔父だ。どんなに優しくしようとも、近くにいようとも、所詮は――」
「だから、叔父じゃなくて、本当の父親になるって言ってるだろ」
少しばかり苛立った口調で、私の代わりに答えた恭弥に、翔は不信な眼差しを向けた。
「本当の父親? 一体どういう意味ですか。養子縁組でもするつもりですか?」
恭弥は反論しなかった。それを見た翔は、身を凍りつかせる。


