彼女は小さく苦笑いを浮かべて、首を横に振る。

「恭弥、寝て。私は眠くないし、大丈夫だから」

「何言ってんだ、疲れた顔して」

彼女の手を引いて無理やり立ち上がらせると、ベッドの上に座らせた。
この小さなシングルベッドで寝返りの激しい心菜と一緒に寝るのは少々辛いかもしれないが、小柄な彼女ならなんとかなるだろう。

俺がその場を離れようとすると、彼女に服の裾を掴まれた。
振り返ってみると、困ったような顔をしてこちらを見上げている。

「でも、眠れないよ……」

「じゃあ、横になるだけでいいから、休め」

「恭弥は……?」

「俺は床でいい」

クローゼットの上の段から使っていない毛布を取り出すと、ベッドの下に放り投げた。
一日くらい寝心地が悪くてもどうにかなる。

「電気消すぞ」

そう言って部屋の明かりを落とし、毛布を身体に巻きつけて座り、ベッドを背もたれにした。
しばらくするとベッドの上の彼女がもそもそと動き出し、何故か俺の右横にちょこんと座り込んだ。

「私もここでいい?」

「なんで」

「……ここがいいの」

ベッドの上の毛布を一枚引っ張ってくると、彼女は俺に習ってそれを身体に巻きつけた。
俺と彼女の間に空いている空間をきゅっと詰め、身体を寄りかからせる。
俺の肩にコツンと頭を乗せ、何度か位置を微調整したあと、丁度良いポジションを見つけたようだ、彼女がおとなしくなった。