恋は天使の寝息のあとに

そろそろ寝ようかなんて考えていた矢先。玄関のチャイムが鳴った。
こんな時間に尋ねてくるような人物に心当たりがなくて、一体何事かと玄関へ向かう。
ドアに付いている覗き窓を確認しながら、これがもし悪戯だったら、そいつをぶん殴ってやろうなんて思っていた。

が、そこにいたのは泣きそうな顔の沙菜。何故か布団を抱えている。

「沙菜!? お前、どうして……」

玄関を開けて、布団の塊の中心に心菜が埋もれていることに気づいて、余計に頭が混乱した。

何故こんな時間に? どうして心菜は布団にくるまれているんだ?
やっぱりこの女のやることは、俺の理解を超えている。

「とにかく……入れ」

とりあえず、何かあったことはわかったから、布団ごと心菜を受け取って、彼女を部屋の中に招き入れた。


彼女の視線がテーブルの上へと注がれる。
そこには灰皿と吸殻が数本転がっていて、しまったと思った。

「悪い、煙たいか?」
俺の言葉に彼女は「だいじょうぶ」と答え、少しだけ顔をしかめた。

お前がくるって分かってたら、煙草なんて吸わなかったよ……

なんだか悪事を暴かれたみたいでバツが悪い。


俺が心菜を寝室のベッドに寝かせている間、沙菜はリビングにただぼーっと突っ立っていて、その表情は明らかに憔悴していた。
っていうか、さらにまた痩せたんじゃないか?