恋は天使の寝息のあとに

次第に週末を憂鬱と感じるようになっていった。
おそらく翔も、下手をしたら心菜も、そう感じているのではないだろうか。


そして訪れた土曜日。
翔は心菜の笑顔や泣き顔に翻弄されて、機嫌を良くしたり悪くしたり、相変わらず気分のむらの激しい一日だった。
夜の十一時、寝渋っていた心菜がやっと眠りについて、翔が大きなため息と共に呟いた。

「心菜が寝ると、本当にホッとするよ」

よかった、安心した、なんていうようなニュアンスではなく、本当にうんざりとした声。
翔はソファに身をもたれ、ぐったりと身体を休めながら、私の方に視線を向ける。

「ねぇ沙菜。もしもこの子がいなかったらって、考えたことない?」

翔の質問に、私は驚いて首を横に振る。

「そしたら、二人でのんびり過ごせるのにね」

そして浮かべた笑顔は悪意に満ち溢れていた。

「沙菜はさぁ、毎日こんなに大変な思いして世話してて、もういなくなっちゃえばいいのにとか、思ったりしないの?
病気とか、怪我とか、たまたま死んでくれたら楽なのに」

彼の言葉に、背筋がぞくっと寒くなった。

冗談じゃない。
愛する我が子に、何よりも大切な娘に、そんなこと思うわけないじゃん。


やはり翔では無理だと思った。
彼は心菜を愛していない。
いや、愛しているのかも知れないけれど、それ以上に彼の心を蝕むストレスの方が上回っている。

このままでは、また昔の二の舞だ。彼を追い詰めて、壊してしまう。

私たち三人が一緒にいることで、これからの人生、良い影響を及ぼしあえるとは思えなかった。
翔も、心菜も、私も、誰も幸せになれない気がした。