私たちの前から姿を消した翔は、その後どこにも見当たらず、どうやら家の外に出たようだった。
特に探すようなこともせず、私は普段どおり心菜をお風呂に入れて、寝かしつけ、夕食の後片付けなんかをしていると、やがて翔が帰ってきた。
台所で洗い終わった食器を拭いている私の後ろに、黙って立つ彼。
「……どこにいたの?」
私はなるべく彼の気に触らないように軽い口調で問いかけたが、彼は質問に答えなかった。
代わりに、唇の端をニヤリと上げて、しかし瞳は全く笑っておらず、どことなく陰の空気を纏いながら口を開いた。
「……子ども相手に大声出して、情けないヤツだと思っているか?」
自嘲する彼がどことなく哀れで、フォローしてやらなければいけないと思った。
「そんなことないよ。私だって苛々するときくらい、あるし」
私の言葉に、彼は額に手を当てて、ハハッと笑い声を上げた。
人を小馬鹿にするような、嫌な笑い方。
「そう言ってくれる割には、僕のことを全く信頼していないよね」
彼は不愉快な笑みを浮かべたまま、私の方へ一歩近づく。
「さっき心菜を慌てて庇ったのだって、僕が彼女を傷つけると思ったからだろう?」
言い当てられて、返す言葉がなかった。
食器を拭く手を止め黙り込んだ私の目の前に、彼は立ち塞がる。
「どうしてあの子が僕を『パパ』って呼んでくれないか、分かる?」
彼が私の手の中にある布巾と食器を奪い取って、流し台に置いた。
もう十分私たちは手の届く距離にいるのに、それでも彼はこちらに歩み寄ってきて、私はじりじりと後ろへ追い詰められる。
「君が僕を『パパ』って呼ばないからだよ」
背中が冷蔵庫に当たってこれ以上逃げられないところで、彼が私の顔の横に右手をついた。
身動きが取れなくなって、私は恐怖で身体が凍りつく。
特に探すようなこともせず、私は普段どおり心菜をお風呂に入れて、寝かしつけ、夕食の後片付けなんかをしていると、やがて翔が帰ってきた。
台所で洗い終わった食器を拭いている私の後ろに、黙って立つ彼。
「……どこにいたの?」
私はなるべく彼の気に触らないように軽い口調で問いかけたが、彼は質問に答えなかった。
代わりに、唇の端をニヤリと上げて、しかし瞳は全く笑っておらず、どことなく陰の空気を纏いながら口を開いた。
「……子ども相手に大声出して、情けないヤツだと思っているか?」
自嘲する彼がどことなく哀れで、フォローしてやらなければいけないと思った。
「そんなことないよ。私だって苛々するときくらい、あるし」
私の言葉に、彼は額に手を当てて、ハハッと笑い声を上げた。
人を小馬鹿にするような、嫌な笑い方。
「そう言ってくれる割には、僕のことを全く信頼していないよね」
彼は不愉快な笑みを浮かべたまま、私の方へ一歩近づく。
「さっき心菜を慌てて庇ったのだって、僕が彼女を傷つけると思ったからだろう?」
言い当てられて、返す言葉がなかった。
食器を拭く手を止め黙り込んだ私の目の前に、彼は立ち塞がる。
「どうしてあの子が僕を『パパ』って呼んでくれないか、分かる?」
彼が私の手の中にある布巾と食器を奪い取って、流し台に置いた。
もう十分私たちは手の届く距離にいるのに、それでも彼はこちらに歩み寄ってきて、私はじりじりと後ろへ追い詰められる。
「君が僕を『パパ』って呼ばないからだよ」
背中が冷蔵庫に当たってこれ以上逃げられないところで、彼が私の顔の横に右手をついた。
身動きが取れなくなって、私は恐怖で身体が凍りつく。


