恋は天使の寝息のあとに

大丈夫、だいじょうぶだ。
まだ彼は手を上げていない。
ちゃんと約束通り、セーブしてくれている。
脅えることはない。冷静になれ。

「……私こそ、ごめん」

二人の間に気まずい緊張が漂う。

先に強い口調で言った私の方が悪いんだ。
彼は、同じトーンで言葉を返しただけ。
昔の彼だったらとっくに当たり散らしているかもしれないし、テーブルを叩くくらいで堪えてくれたなら、きっとこれは成長だ。

こんな言い争いくらい、どこの夫婦だってやってるだろうし。
不安に思うことなんて、何もないんだから。

心の奥底で感じている恐怖に、気づかないふりをした。
それに支配されてしまったら、夫婦生活どころじゃなくなってしまうと思うから。
彼のことを信頼できているって、思いたかった。

できることなら私だって、付き合い始めた当初のような、想い合える関係に戻りたいよ。
恭弥も言ってくれた。元通りの家族に戻れるな、って。
私と、翔と、心菜の三人で、普通の家族になりたい。

幸せにならなければ。
じゃないと、恭弥とさよならした意味がない。