「本当に、反省しているんです! もう二度としないと誓います! 次に手を上げたら、今度こそ警察沙汰にしてくれても構わない!
だから頼みます! もう一度沙菜と話をさせてください」
叫びすぎて掠れた声で、彼は頭を床に擦り付ける。
謝られているというのに、なんとも不愉快な気分だった。
今さら後悔している彼を、無様な謝罪姿を晒すことになってしまった彼を
可哀想とも、ざまあみろとも思えなかった。
できることなら、こんな茶番、さっさと終わらせてしまいたい。
かつて私を裏切った男。
私の妊娠中、他の女性と浮気をして、のめり込んで、逆上したあげくに手まで上げて。
確かにその頃、彼自身も大変な時期であったことは確かだ。
仕事で昇進したことや、これから父親になるというプレッシャー。それらが重なり、真面目な彼は追い詰められていたのだろう。
心労のせい、といってしまえばそれまでだ。
しかし私にだって耐えられる限度というものがある。
どんな過ちも許されるわけではない。そばで支えてやりたい気持ちの反面、浮気と暴力のダブルパンチを私は許すことができなかった。
当時の私は散々悩んだ挙句、離婚届を突きつけたのだが、彼自身もその結末を望んでいたようで、結果的には彼の思い通りに事が運んだ。
彼の離婚の条件は、慰謝料なし、養育費なし、親権を全て放棄するというもの。
彼は私たちとの仲を清算したがっていた。
浮気相手の女性と、新たな人生をやり直すつもりだったのだろう。
私は条件を飲んだ。
私が働きながら両親の遺した財産をやりくりすれば、生活は厳しくてもなんとかお腹の子どもを育てられると踏んだからだ。
何より、こんな不毛な関係はさっさと清算してしまいたかった。
できればもう二度と会いたくはなかった。
――なのに、今さら謝りにくるなんて。
ああ、せっかくの良いお天気なのに。
台無しだ……
なんだか投げやりな気分で、私はその男を見下ろした。
だから頼みます! もう一度沙菜と話をさせてください」
叫びすぎて掠れた声で、彼は頭を床に擦り付ける。
謝られているというのに、なんとも不愉快な気分だった。
今さら後悔している彼を、無様な謝罪姿を晒すことになってしまった彼を
可哀想とも、ざまあみろとも思えなかった。
できることなら、こんな茶番、さっさと終わらせてしまいたい。
かつて私を裏切った男。
私の妊娠中、他の女性と浮気をして、のめり込んで、逆上したあげくに手まで上げて。
確かにその頃、彼自身も大変な時期であったことは確かだ。
仕事で昇進したことや、これから父親になるというプレッシャー。それらが重なり、真面目な彼は追い詰められていたのだろう。
心労のせい、といってしまえばそれまでだ。
しかし私にだって耐えられる限度というものがある。
どんな過ちも許されるわけではない。そばで支えてやりたい気持ちの反面、浮気と暴力のダブルパンチを私は許すことができなかった。
当時の私は散々悩んだ挙句、離婚届を突きつけたのだが、彼自身もその結末を望んでいたようで、結果的には彼の思い通りに事が運んだ。
彼の離婚の条件は、慰謝料なし、養育費なし、親権を全て放棄するというもの。
彼は私たちとの仲を清算したがっていた。
浮気相手の女性と、新たな人生をやり直すつもりだったのだろう。
私は条件を飲んだ。
私が働きながら両親の遺した財産をやりくりすれば、生活は厳しくてもなんとかお腹の子どもを育てられると踏んだからだ。
何より、こんな不毛な関係はさっさと清算してしまいたかった。
できればもう二度と会いたくはなかった。
――なのに、今さら謝りにくるなんて。
ああ、せっかくの良いお天気なのに。
台無しだ……
なんだか投げやりな気分で、私はその男を見下ろした。


