「沙菜、いいか」
恭弥が再びしゃがみ込む。混乱する私の両頬を彼が両手で包み込み、俺を見ろ、と、顔を真っ直ぐにさせた。
「もし夜中に何かあったら、俺に電話しろ。五分で来てやる。
俺が車で救急の病院に運んでやるから。それでいいな?」
曇りなく鋭い恭弥の瞳。厳しい口調と背中合わせの頼もしさ。
でも、私はそれだけじゃ満足できなかった。
「五分なんて、無理じゃん。恭弥の家からここまで、三十分はかかるよ」
「……それは言葉の綾っつーか、気持ち的なもんで――」
「嘘つき! 三十分も待ってたら心菜死んじゃうよ!」
「……だぁー! わかったよ!」
恭弥は苛立った声で吐き捨てると、腕を組み胡坐をかいてその場にドカッと座り込んだ。
「しばらくここに居てやるから! お前もそんなところでうじうじしてないで、さっさと風呂入って寝ろ! ただでさえ夜泣きで寝不足なんだろ!?」
不満げな顔をしている恭弥を、疑い深い私はまじまじと覗き込む。
「……しばらくっていつまで?」
「……いつまで居て欲しいんだよ?」
完全に私のわがままで、これ以上甘えちゃいけないと分かっていたのだけれど。
もしも心菜に何かあって、その場にいるのが私ひとりだったら、冷静でいられる自信がなかった。
「……心菜の熱が下がるまで」
「わかったよ」
恭弥は根負けしたかのようにため息をつくと、そのまま黙って目を閉じた。
恭弥が再びしゃがみ込む。混乱する私の両頬を彼が両手で包み込み、俺を見ろ、と、顔を真っ直ぐにさせた。
「もし夜中に何かあったら、俺に電話しろ。五分で来てやる。
俺が車で救急の病院に運んでやるから。それでいいな?」
曇りなく鋭い恭弥の瞳。厳しい口調と背中合わせの頼もしさ。
でも、私はそれだけじゃ満足できなかった。
「五分なんて、無理じゃん。恭弥の家からここまで、三十分はかかるよ」
「……それは言葉の綾っつーか、気持ち的なもんで――」
「嘘つき! 三十分も待ってたら心菜死んじゃうよ!」
「……だぁー! わかったよ!」
恭弥は苛立った声で吐き捨てると、腕を組み胡坐をかいてその場にドカッと座り込んだ。
「しばらくここに居てやるから! お前もそんなところでうじうじしてないで、さっさと風呂入って寝ろ! ただでさえ夜泣きで寝不足なんだろ!?」
不満げな顔をしている恭弥を、疑い深い私はまじまじと覗き込む。
「……しばらくっていつまで?」
「……いつまで居て欲しいんだよ?」
完全に私のわがままで、これ以上甘えちゃいけないと分かっていたのだけれど。
もしも心菜に何かあって、その場にいるのが私ひとりだったら、冷静でいられる自信がなかった。
「……心菜の熱が下がるまで」
「わかったよ」
恭弥は根負けしたかのようにため息をつくと、そのまま黙って目を閉じた。