「……行けない理由があるのか?」
恭弥が声をひそめた。不思議そうに、というよりは不愉快そうに。
そりゃそうだ。心菜より優先すべきことなんてあるはずがない。
それは私だって同じだけれど――それでも恭弥には分かるまい。
こんな言い訳、彼に話したくないけれど。私は仕方なく口を開いた。
「……今週ずっと会社を休んでたから、また休むの申し訳ないなって」
口にした途端、恭弥の大きな手に肩を掴まれて、私の上半身は強引に彼の方へと向けられる。
「休んでたって、何かあったのか!?」
ソファから身を乗り出して私を問いただす恭弥。
その表情がいつにも増して真剣で、まるで心配で仕方がないとでもいうような瞳。
顔色を探るように、その薄茶色の双眸がじぃっと睨みを利かせていて、私は思わずごくりと息を飲んだ。
そうだった。恭弥にはまだ心菜が熱を出したことを話していなかったんだ。
「私じゃなくて、心菜が。週明けからずっと熱を出してたの。ただの風邪だし、もう治ったから……」
「そう……か」
安心したのだろうか。恭弥は険しい瞳をふっと緩めると、私の肩から手を離す。
「……そういうこと、何にも教えてくんないんだな」
恭弥は私から視線を外してソファに身体を預けると、少し寂しそうに呟いた。
「だって、言っても心配かけるだけでしょ?」
「そりゃそうだけど、そういう問題じゃねぇじゃん」
今度はふいっと反対側を向いて、なんだかいじけたような声を上げる。
恭弥が声をひそめた。不思議そうに、というよりは不愉快そうに。
そりゃそうだ。心菜より優先すべきことなんてあるはずがない。
それは私だって同じだけれど――それでも恭弥には分かるまい。
こんな言い訳、彼に話したくないけれど。私は仕方なく口を開いた。
「……今週ずっと会社を休んでたから、また休むの申し訳ないなって」
口にした途端、恭弥の大きな手に肩を掴まれて、私の上半身は強引に彼の方へと向けられる。
「休んでたって、何かあったのか!?」
ソファから身を乗り出して私を問いただす恭弥。
その表情がいつにも増して真剣で、まるで心配で仕方がないとでもいうような瞳。
顔色を探るように、その薄茶色の双眸がじぃっと睨みを利かせていて、私は思わずごくりと息を飲んだ。
そうだった。恭弥にはまだ心菜が熱を出したことを話していなかったんだ。
「私じゃなくて、心菜が。週明けからずっと熱を出してたの。ただの風邪だし、もう治ったから……」
「そう……か」
安心したのだろうか。恭弥は険しい瞳をふっと緩めると、私の肩から手を離す。
「……そういうこと、何にも教えてくんないんだな」
恭弥は私から視線を外してソファに身体を預けると、少し寂しそうに呟いた。
「だって、言っても心配かけるだけでしょ?」
「そりゃそうだけど、そういう問題じゃねぇじゃん」
今度はふいっと反対側を向いて、なんだかいじけたような声を上げる。


