恭弥は里香さんを追いかけるかと思いきや、家に留まることを選択した。
それを嬉しいと感じると同時に、私たちを優先した彼を見るのが辛くもあった。
里香さんを玄関で見送ったあと、リビングに戻るなり私に向けてぼそりと呟く。
「里香が変なこと言ってごめん」
私と里香さんの会話を聞いていたのだろうか。
ううん、そんなことより、どうして恭弥が代わりに謝るのだろうか。
私は困惑しながら彼の顔を見上げる。
「……聞いてたの?」
「そりゃ聞こえるだろ。リビングと台所、隣なんだから」
恭弥は苦々しい顔で、居心地悪そうに頭をぐしゃぐしゃと掻き乱した。
気にしない振りで心菜と遊び始める私の背中に追いすがるように、恭弥は弁解する。
「言っとくけど、俺らが別れたの、心菜が産まれるずっと前の話だから。
お前のせいでどうとかっていうわけじゃないから」
正直、そんなフォロー嬉しくもない。
だって里香さんはそういうことを言いたかったんじゃない。
私のせいで、復縁できないって言ってるんだ。
恭弥の鈍感。
私は恭弥に背を向けたまま、まるで世間話をするかのように軽い口調で問いかける。
「恭弥は、里香さんのことどう思ってるの?」
「別に今さら、何も思ってねぇよ」
「じゃあどうしていつも一緒にいるの?」
「いつも一緒になんていねぇよ」
「嘘。だってこの前の日曜日も今日も一緒だったじゃん」
「だから、たまたまだって」
次第に恭弥の声が苛立ってきた。都合が悪くなるとすぐ怒る。
「ひょっとして、同棲とか……」
「どうしてそうなるんだよ!」
恭弥が私の肩に手をかけて、振り向いた先には怒りを宿した鋭利な瞳があった。
それを嬉しいと感じると同時に、私たちを優先した彼を見るのが辛くもあった。
里香さんを玄関で見送ったあと、リビングに戻るなり私に向けてぼそりと呟く。
「里香が変なこと言ってごめん」
私と里香さんの会話を聞いていたのだろうか。
ううん、そんなことより、どうして恭弥が代わりに謝るのだろうか。
私は困惑しながら彼の顔を見上げる。
「……聞いてたの?」
「そりゃ聞こえるだろ。リビングと台所、隣なんだから」
恭弥は苦々しい顔で、居心地悪そうに頭をぐしゃぐしゃと掻き乱した。
気にしない振りで心菜と遊び始める私の背中に追いすがるように、恭弥は弁解する。
「言っとくけど、俺らが別れたの、心菜が産まれるずっと前の話だから。
お前のせいでどうとかっていうわけじゃないから」
正直、そんなフォロー嬉しくもない。
だって里香さんはそういうことを言いたかったんじゃない。
私のせいで、復縁できないって言ってるんだ。
恭弥の鈍感。
私は恭弥に背を向けたまま、まるで世間話をするかのように軽い口調で問いかける。
「恭弥は、里香さんのことどう思ってるの?」
「別に今さら、何も思ってねぇよ」
「じゃあどうしていつも一緒にいるの?」
「いつも一緒になんていねぇよ」
「嘘。だってこの前の日曜日も今日も一緒だったじゃん」
「だから、たまたまだって」
次第に恭弥の声が苛立ってきた。都合が悪くなるとすぐ怒る。
「ひょっとして、同棲とか……」
「どうしてそうなるんだよ!」
恭弥が私の肩に手をかけて、振り向いた先には怒りを宿した鋭利な瞳があった。


