恋は天使の寝息のあとに

それは、私と心菜が恭弥を縛り付けている、という意味だろうか。
そんな意図はないのかもしれないけれど、心の奥底にある罪悪感から、それがどうしても嫌味に聞こえてしまって、私はいたたまれない気持ちになった。
言い回しから察するに、ひょっとして恭弥は、里香さんよりも私たちを選んだのだろうか。
自分のことよりも、私たちを優先して……恭弥の心菜に対する溺愛ぶりを考えると、ありえないことじゃない。

「私たちの……せいですか……?」

彼女の目を直視することはできなくて、私はうつむきながら問いかけた。
私が心配していたことが、現実のものとなってしまった。
私と心菜のせいで、恭弥と里香さんの未来が奪れている。

私の質問に、里香さんは少し考えたあと、悲しい笑みを浮かべながら言った。

「『私たち』? 違うわ。あなたのせいよ」

「え……」


呆然と、瞬きも忘れて、私は一心に虚空を見つめる。

私のせい……?

その言葉はまるで、私が恭弥を不幸にした、そう断言されたような気がして、胸に深く突き刺さった。

そりゃあそうか、子どもである心菜に責任があるわけはない。
全て親である私が悪い。
恭弥を縛り付けて離さないのは、私だ。

明らかに傷ついた顔をしてしまった私に、里香さんは慌てて弁解した。

「ああ、ごめんなさい、変な意味じゃ――」

言いかけたところに台所から恭弥が戻ってきて、彼女の言葉は中断される。