「そうだよね!
何も全く読まないってわけじゃないんだし、もしかしたら、読んでるのに読んでないふりしてるのかもしれないし。
……ねぇ、なんか、瑠威ってちょっとシャイなところあるよね?
だから、実はファンレターも全部読んでて、でも恥ずかしいから読んでないふりしてるのかもしれないよねぇ…」

「そ、そうかもしれないね。」

「私、手紙と一緒にツーショットの写真も入れといたんだ。
そしたら、写真見て『あ、あの子だ。』って思い出してくれるかも知れないし。」

さゆみはそう言って、ふふふと笑う。
本当にさゆみって前向き…
しかも、すっごく積極的…!
なんで今まで気づかなかったんだろう?
シュバルツのライブに行くまではそんなこと少しも感じた事なかったのになぁ…



「あ、そうだ、これ見て!」

さゆみはスマホの画面を私の前に差し出した。



「これ、昨夜撮ったやつなんだけど…なんか、けっこうお似合いな雰囲気じゃない?」

「そうだね。」

それは嘘というわけではなかった。
さゆみが瑠威の腕に自分の腕を絡めて、ちょっと肩にもたれるような感じで写ってて、確かにそれなりに良い感じに撮れていた。



「でしょう?
今度、この写真も渡そうと思ってるんだぁ…」

瑠威のところにはこういう写真もいっぱい集まって来てるんだろうな。
そんなのはきっとママには見せたくないよね。
昨夜、瑠威は、別にママに気遣ってるわけじゃないって言ってたけど、やっぱり気を遣ってるんだよね。
気遣ってなんかいないっていったのは、きっと瑠威のカッコ付けなんだろうと思う。