「え・・・。」


抑えきれず溢れ出したやっとの言葉が病室の消えかかっている蛍光灯の明かりにかき消されていった。


『実ゎあの人の事好きなんだよねぇ(ハート)』

とか

『あの人カッコよくない?』

という会話がどこに面白みがあるのかが分からない。全く。微塵も。1ミリも。
友情とか、愛とか、恋とかも全く分からない。

こんな偏(変)見を持った私はまっっっったくモテない。同性にも、異性にも。(当然だ)
まず興味自体持てないのだ。持つ気など微塵も無い。

・・・と言ってもそんなオーラを放っているだけだ。
名付けて
【私は自分以外興味を持たないオーラ】だ!!

・・・というのもどうでも良くて、本当は興味がある。
普通の女の子になりたい、友情も、愛も、恋も知りたいのだ。本当は・・・。

それを隠すのにも、偏(変)見を持つにも理由がある。簡単に説明しよう。

私は17歳のできちゃった婚をした母親のお腹から産まれた。そんなことが滲み出たかのような名前だ。
【古垣実里(ふるがきみさと)】(・・・せめて『美』が良かった。)
父親は母親が16歳の頃無責任なことに蒸発したらしい。母親も私が2歳になりたての時自殺した。

・・・その後は想像するだけで私も分からない。知りたくもない。微塵も。

その空白のページは置いておいて、今はその私の脳内の片隅に残骸のみを残す二人の隣人だったという畑山美代子(はたやまみよこ)さんの家で暮らしている。
お陰様で14歳の中学3年生だ。元気な。

だが、そんな不幸の塊のような女には誰も近づかない。近づ『けない』のが正しいのであろうか?

そんな(自分を傷つけるような)説明をしている間にもう午前8時だ・・・。
ん・・・?
・・・午前8時?

・・・ゴゼンハチジ?

・・・。


「ちっちっ遅刻だぁぁぁぁあああぁぁぁああ!!!」

「るっっっさい!!」


美代子さんのナイスツッコミを褒め称えたい私だが、そんなことをしている暇もないっ。微塵もっ!!


「ヒーー・・・・・。間に合っちゃ・・・。」
5分で全ての準備を終えっ・・・。
歩いて30分の中学校に10分でっ、着くという最速ラップを叩き出した私は・・・。
死にそう・・・。

そんなことよりも死亡レベルに達していることがある・・・。

周りの目線が激痛だっ!!

当然の事であろう・・・。
いつも読書スピードが一般人よりも速いだけが取り柄の私(※自慢じゃありません)が、プロ球技の選手がスライディングするかのように遅刻2分前で、椅子に座り込んだクソ真面目女子を目の当たりにしたのだ。

・・・それも(本当は)気にしてい(る)ない私は、読書を始めた。(1分のみ)

その直後、ホームルームが始まり・・・・・・終わり・・・溜息だ。

そして更にその直後


ガラガラッ・・・バンッ


「古垣さん、ちょっと来てくださる。」

本当にこんな漫画のようなことが起き・・・ん?古垣・・・ですか?
フルガキ・・・って私ですよね?私の事ですよね?


「・・・は?私っすか?」


ヤベッ・・・本音出たっ・・・。
黒髪ストレート(キツめな)美人はそんな事に半ば驚きながらも


「・・・いいから来て。」