純情初恋

期末テスト当日、私は気分が晴れなかった。
(あー…どうしよう…現代文、せっかく海李君が教えてくれたのに緊張しちゃって全然分かんなかった…)
そしてテストが始まり、あっという間に時間は過ぎていった。
(はぁ…やっぱり全然駄目だった…少しでも自分でやっといて良かった…)
その日の放課後、いつものように残って勉強していると、
「どうしたの?凜音」
私がいつもより浮かない顔をしているのに気がついた真珠が声を掛けてくれた。
「う、ううん…何でもないよ…」
「あー!嘘だぁ!何かあったんでしょ!」
「ほ、ほんとに…何でもないの…」
「おい凜音水臭いぞ!俺らに隠し事かぁ?」
「そうだぞ。何かあったんなら皆でその悩みを共有するのが友達ってもんだろ」
「………」
私が黙っていると、海李君が心配そうに言った。
「何かあったのか?俺達には言えない事なのか?」
「ち、違うの…ほんとに、今日はちょっと…た、体調…が、優れない…だけで…」
「そうね。今日はなんだか顔色が悪いみたいだわ」
「分かった。じゃあ俺が送ってく」
海李君がそう言って帰る準備を始めた。私はオドオドしていたが、他の皆も賛成してくれたので、そのまま海李君と帰ることになった。
帰り道、私達は黙って歩いていた。
(何を話せばいいんだろう…何か、何か話さないと…)
「ご、ごめんね…私のせいで…帰ることになっちゃって…」
「何言ってんだよ。体調悪いやつそのままにして勉強する方が俺は嫌だ」
私は顔がかぁっと熱くなるのを感じた。
「あ、ありがと…海李君…」
「気にすんなって」
彼はそう言って笑うと、私の方を見てすぐに顔を逸らしてしまう。その横顔は、何だかいつもより赤くなっているような気がした。
私の家の前まで来ると、海李君は手を振って帰っていった。気がつくと、私はその後ろ姿をずっと見つめていた。