純情初恋

「はーい、今から出席をとります」
朝のホームルームが始まった。
ケンチー、正太郎、真珠達と出会い、数ヶ月が経った今、私は、体調が悪い時に心配してくれる人がいる事、泣いた時に慰めてくれる人がいる事、失敗してた時に一緒に手伝ってくれる人がいる事など、初めて人の優しさに触れる体験をして、グループの他の4人とも普通に話せるくらいまで仲良くなり、友達という大切な存在に変わっていた。そして、6人全員に隠し事や悩みは打ち明けるようになった。
4時限目の体育、私はそわそわしながら体育館へ向かった。今日はバスケットボールだ。
(ヤバイヤバイヤバイ…私、バスケットボールは……)
オドオドしていると、華夢と真珠が心配して近くに来てくれた。
「凜音大丈夫?バスケ嫌いなの?」
「凜音、私たちに隠し事は無しでしょう?何かあるなら教えて」
「それが…中学の時にバ、バスケットボールが飛んできて…頭に…と言うか、か、顔に…当たっちゃって…そのまま気絶した…というか…それで…ちょっと…」
「なるほどね。凜音は体が弱いんだし、しょうがないわよね」
「私が先生に言ってきてあげる!だから凜音は休んでて!」
「あ、ありがと…」
華夢と真珠のおかげでバスケットボールを見学できるようになった凜音は、隣のコートでバスケをしている男子の方を眺めていた。
(あ、ケンチー意外と上手いなぁ…正太郎もシュートたくさん決めてる…あ!海李君だ…カッコイイなぁ…)
そんなことを考えて見ていると、時間はすぐに過ぎ、4時限目は終わった。

昼食をいつものメンバーで食べていると、真珠が、急に思い出したように言った。
「あっ、そうだ。もう少しで期末テストだから、皆で放課後勉強しない?」
「それはいいな。華夢とケンチーは馬鹿だからしっかり勉強しないと夏休み補習もあるみたいだしな」
「何っ!?補習なんてのがあるのか!?くっそぉー!夏休みは部活の合宿もあるのにー!俺の青春が終わってしまう!」
「あー!私もカラオケとかいっぱい行きたいのにー!」
「いや、だから勉強するんだろ」
「海李め!自分は頭いいからってー!」
「でもさ、よく考えたら私とケンチー以外皆頭いいよねー」
「だよなー。真珠は学年1位、正太郎は学年2位、海李は5位、凜音は7位…くっそぉー!俺も10位以内に入ってやるぅー!」
「いい意気込みだけど、それは無理だな」
「なんだと正太郎!俺には無理だってのか」
「いや、お前は10位以内の前にクラスで最下位から抜け出す事を考えた方がいい」
「くっそぉー!俺には無理だぁぁぁぁ!」
「ひゃっひゃっひゃっ!」
「華夢も笑ってる場合じゃないわよ。あなたは下から2番目なんだから」
「うっ……」
「ふふっ」
私は皆の会話に思わず笑ってしまった。そして皆の視線が自分に集まっている事に気づくと、はっとして言った。
「ご、ごめん…そ、そんなつもりじゃ……」
すると、皆目を見合わせながら笑って言った。
「なんで謝るの?私達は初めて凜音が笑う所を見られて嬉しいのよ。これからももっと笑っていいからね」
「そうだぞ!俺様の笑顔を分けてやる!ほれっ!ほれ!ほれ!」
ケンチーは私を笑わせようと変顔をしてくれている。他の皆も笑ってくれている。私はとても幸せな気持ちになった。そして、自分でもびっくりするくらいの笑顔で皆の顔を見た。