「あのね、まゆ」
引き出しの中を覗き込んで、なにやらゴソゴソやっているまゆに話しかける。
「んー?どしたのー???」
お目当のものが見つかったのか、教科書を机の上に置きながら聞き返してくるまゆ。
「私、あの席頑張れそう」
「うんうん、そうか!って、ええぇえ!?なんだって!?」
「だから、私、あの席で頑張れそう!」
きちんと聞こえるようにさっきよりも大きな声で言う。
頑張れそうなんだよ、私。
さっきのように男の子のことを、あんなにじっと見られたのは、私にとってすごいこと。
それに、望月くんは私が思うような男の人じゃないってわかったんだ。
昨日、助けてくれたこと、今朝、お礼にクッキーを渡したこと、男性恐怖症を治してやると言われたこと。
つい感情的になってしまったこと、詮索せずに普通に接してくれたこと、望月くんは私の思っているような男の子ではないとわかったこと。
つっかえながら、つっかえながら話終わってふわりと微笑むと、まゆは震える声で、
「よかった。よかった。頑張って!なにかあったらすぐに言うんだよ」
と言ってくれた。
うん、と頷いて笑ってみせる。
私は、大丈夫だよ。心配かけてごめんね。ありがとう。
そんな思いを込めて笑えば、さすが親友、言葉にせずともわかったように大きくコクリと頷いてくれた。

