目が合った瞬間、長谷川の肩がびくりと震えた気がしたが気のせいだったのか、長谷川はすっと俺の目を見て、
「何かようですか」
ときいてきた。
俺は、何も言わずに長谷川の顔をじっと見つめてみる。
俺の目をこんなにまっすぐにみてくる奴なんて他には誰もいなかった。
それになんだか、顔色が悪そうに見える。
大丈夫なのか?
「───お前、顔色悪いけど」
「............。そんなコトないです」
心配してやっているにもかかわらず、
即答で、返してきた。
まったく、かわいくない奴め。
大丈夫じゃないだろ。その顔色は。
コイツ、強がりだな。
黙り込んだ俺を見て、もう話すコトはないと言いたげに、長谷川はそっぽを向いてしまった。
「話、終わってないけど」
「私は、話すコトありません」
何を言っても、即答で返してくる。
どんだけ、話したくないんだよ。
「俺は、話すコト、あんの」
すると長谷川はすっと、こちらをみて、冷たい声で言い放った。
「他の女の子にやってたみたいに、他人と距離を置いて接するんなら、私は話したくないです」
「..............」
思わず、言葉を失う。
今までの奴らは、みんな気付かなかったのに。
コイツ───長谷川だけは気づいていたのだ。
コイツ、本当は優しいのかも。
他人のコトをよく見ていないと、優しくもできないし、心配もできない。
さっき、心配そうに声を掛けたのは、俺のコトをよく見ていたからなんだ。
───ふ〜ん。思ったより、いいヤツじゃん。
何も言わなくなった俺を見て、何を勘違いしたのか長谷川は、
「あ、あの。失礼なコトを言ってすみませんでした」
と謝ってきた。
「ん?別に。それより、体調大丈夫なのか?」
「大丈夫です」
本当は大丈夫じゃなさそうだけど、
気のせいかな。
「ちゃんと、復習するようになー」
長谷川と話してから、しばらくするとやっと退屈な授業が終わった。

