それからひと月。
 学校が始まって、経った。
 センパイを見かけることはなかった。
 もちろん、私は頻繁に屋上の入り口、いつもの場所に訪れていたけど、センパイが来た形跡すらなかった。
 学校にも、来ていないのかもしれない。

 私が、告白をしたから?
 ぬるま湯に浸かっているような、身体がじんわり温かくなるような心地よさを、センパイは気に入っていたんだと思う。
 ――それを、私は壊してしまったのだ。

 私は、もうこの場所にきてはいけない。

 たとえ来たくても。センパイが来るかもしれないと分かっていても。
 私はきっと、過去の自分と決別する時間が来てしまったのだと、そう自分自身に言い聞かせるように鳴った。

 心が壊れそうなぐらいに、つらい日々が始まった。
 それは、センパイに会う以前の私よりも、もしかしたら苦しんでいたのかもしれない。

 そんな毎日は、単調な生活だった。
 センパイと会わない、それだけで心が餓死してしまいそうだった。

 そんな日が、ひと月続いて。
 学校中の生徒がざわめく日が近づいた。

 バレンタインデー。

 センパイに会えないかもしれない……いや、会えないだろう。
 そう、分かっていても、彼に贈るためのチョコを一週間前から用意しようと決めていた。

 そして、バレンタインデー当日。
 スクールカバンと一緒に、小さな紙袋に入れた、センパイへの愛を込めたチョコレートを大事に持って学校に向かっていた。

 バスを降りて、ふと顔を上げると、雪の精が舞い降りていた。