《日向side》


橘日向、16歳。勉強は普通、スポーツはできる。


どこにでもいる平凡な男子高校生。



その日も、オレは、友達と公園にたまってアホみたいなことで笑いあっていた。


夏休み真っ只中。暑いというより熱いという方が正しい猛暑日。


「あー、喉乾いた。誰かジュース買ってこいよ」


友達が言った。


「日向、頼むっ」


「えー」


毎度のことながら、少しだけ反抗してみる。


「頼むよ。今月金欠なんだよ」


いつまで、金欠続くんだよ。


まあ、友達に頼られるのも悪くないか。


「て、この公園、自販機ないだろ」


「近くにあったぞ」


はあ、めんどくせー。


公園を出て少し歩くと、赤い自販機が見えた。


もう少し行けばコンビニもあるけど、もう歩きたくない。


少し高いが、もういいや。


ガシャン


ジュースを買っていると、


「ウワァァァン!」


子どもの泣き声がした。


振り返ると、2歳前後の女の子が倒れていた。


「うわ……」


さすがにかわいそうになり、助け起こそうとする。


「大丈夫?」


「ままあ!ままあ!」


母親を呼ぶだけで、その子は起き上がろうとしない。


まじかよ。


「むーう?」


母親と思われる声が近づいてきた。


「ままあ!」


その瞬間、女の子は起き上がり、母親のもとへ歩いていく。


その女性を見た瞬間、オレは固まった。思考がフリーズした。


それは、クラスメートの藤咲華恋だったから……