君と私の約束事






連れてこられたのは屋上。



真上には綺麗な青空が広がっていて、私は今の状況も忘れて綺麗だな、なんて事を思っていた。




「おい。」




そんな思いもかき消すかのようなドスの利いた声。



私は一瞬体を震わせて、恐る恐る村瀬の顔を見つめた。




「で?誰が好きだって?」




鋭い目つきで瞳をとらえられ、私は硬直していた。




「おい。聞いてんのかてめぇ。」




一歩距離を縮められ、私は一歩後ずさる。




「ふ、普通に考えて分かんない…?」




「知らねぇ。お前の口から聞きてぇ。」



いやいやいや…

分かってるよねぇ…こいつ…。




「………これ…やるから…。」




そう言われ、あたたかいココアを差し出される。



ココ……ア……。




「……あの…さ…、なんでいつも…ココアなの…?」




確かに好きだけど……




「綾香に聞いたんだよ…。冬にあったかいココアを要に渡すと、すっごい喜ぶんだよ。って…。」




「え……。」



綾香…が…。




「おい。さっさと言えよ。」




気付いたらさっきよりも距離が縮まっていて、後ろへ行こうとする私を村瀬は押さえている。




もう…逃げられない……。




「……き……」




「え…?」










「好きだって言ってんのよ!ばかいと!!」









「ふっ…。なんだそれ。お前らしいな。」




そう言って笑い出す村瀬に、私は恥ずかしくて顔が熱くなっていく。




バッと彼から体を離し、一歩後ろに下がる。





「村瀬。」





「あ?」






「ありがとう。」





「ああ。」




「村瀬…。」





「なんだよ…。」










「私を殺すのは、村瀬だから。私、綾香の分も生きる。」





「……っ……」






あの日のように、今度は私が無理やり指切りをする。





「約束。」







「ああ…。約束だ。





破ったら、死体だろうがなんだろうが、てめぇののどに針千本ぶっさしてやる…。」







「うん…!」





そっと…
村瀬に腕を引っ張られ抱き締められる。




「あと100年くらいは…殺さねーから……。」




「……その前に私の寿命来ちゃう…。」




「うっせ…。それまで死ぬなって事だよ…。ばーか…。」



「うん…。分かった。」






ねぇ綾香。



あなたの分まで私、きちんと生きるから。




私がそっちに行くまで、ちゃんと待っててね?










あ、でも…




私がそっちに行くのは、多分まだまだ先だから。





だって当分、彼は私を殺してはくれないみたいなので。




だからそれまで





見守っていてね…。






        ーendー