「…………は…………?」






「………え……?」





…………私…



何…言って………





「なんつった?」



「っ?!」




村瀬はくるっと後ろを振り向いてこちらまで歩み寄って来ると、ガッと私の肩を掴む。



その瞳にはやはり涙があって、胸が痛むのと同時に、かぁっと顔が一気に熱くなるのを感じ、私は村瀬から視線を外した。




「だ……から…



村瀬が……






好き…です……。」










「………。」



「………。」



「………。」




「むら…せ…?……っ?!」




チラッと村瀬の方を見ようとするが、彼の手のひらによって視界が遮断される。



「ちょっ!」




「中1ん時。」




え……?




「綾香からよく話聞いてて、正直顔も知らないヤツに恋してた。


あの綾香をここまで笑顔にさせたヤツってどんなだろうって…。


綾香に言われて見に行ったら、


すげー可愛くて……。」




え……?




「中3で同じクラスになったとき、すげー嬉しかった。


けど綾香から好きなヤツの事聞いて…腹立った。俺の方がずっと好きだったのにって…。


それで…修学旅行のあの事件が起こって…」





「…っ…。」




「守りたかった。華奢な体震わせながら泣いてて…。

正直殺したいほどあいつが憎かった。お前と綾香が自殺した時は、もう殺そうとも思ってた。


俺の拳が汚れようと、世間に何を言われようと…綾香を…お前を…



汚した挙げ句自殺まで追い込んだあいつを……」





「むら…せ…。」




涙がこぼれた。



彼はそこまで…
そこまで想っていてくれたのだと…。





「綾香が死んで…。絶望だった…。

けど…お前が…お前がいたから…
俺は頑張れたんだ…。

先生にお前の受ける高校教えてもらって、なんとかその高校受かって…。


親に頼んで引っ越しして…お前を……守ろうと思った…。」





「村瀬……。」





「罪悪感でお前につきまとってたんじゃねぇ。
俺はただ…お前が死なないように見張ってるって…

そんな言い訳勝手に作って…

ただ……ただそばにいたかっただけなんだ……!



お前が…







篠原が好きだから……!」






その瞬間、私は彼の手を離して彼を見つめた。




その瞳はやっぱり鋭くて怖いけれど、その中に優しい光が見える。





「村瀬…。」





「ほんっとに……死んだかと思った…。」




ぎゅっとまた抱きしめられ、私はそっとその背中に腕を回した。




「死なないよ…。だってあの日…無理やり指切りされたし…!」





入学式のあの日。




“てめぇは俺が殺すから、もう二度と死ぬんじゃねぇ。”


“破ったら、てめぇが死体だろうがなんだろうがのどに針千本ぶっさすから。”




その言葉が、無理やりされた指切りが、私の傷付いた心を癒やしてくれたのだから。




「ありがとう…。村瀬…。」




あなたが居てくれたから、



今の私があるんだ。