-side海斗-





「綾香。」




お前が死んでから、もう1年経つんだな。




「守れなくて、ごめん。」




墓の前で手を合わせながら、俺はそうつぶやく。




あれから1年。


何度お前が生き返ってくれたら…


なんて叶わぬ願いを願い続けただろうか…?



もしもお前が生きていてくれたらって…、今でもたまに思うことがある。



それでも、やっぱり死はきちんと受け止めなければいけないから…


少しずつだけど俺は、きちんと受け止めてる。










「綾香。もし生まれ変わるなら、今度は幸せな人生を歩んでくれ。」




もう二度と、自分を殺すんじゃねぇぞ?






花束を置き、俺はバッと立ち上がる。





「また来るから。多分今日、あいつも…来ると思うから。」




そう墓に語りかけ、俺はその場を後にした。





「さみーな…。」




空を見上げれば、なんだか綾香が見ていてくれてるような気がして、自然と口元に笑みがこぼれる。





「俺はあいつが笑ってくれんなら…ただそれだけでいいのに…」




なんだろうな?



人間ってすげー理不尽だ。



俺が居たらあいつ幸せになれねーのに…


それなのに…










「そばにいたい…なんてな…。」





そんな言葉誰の耳に入るはずもないのに、空に消えていった言葉は綾香に届いているような気がした。






“頑張れ。お兄ちゃん。”






そんな事を言われているような気がして、俺はそっと空に向かって微笑んでみせた。





もう終わりなんだ…。





もう…




そばにはいられない…。