次の日、いつもとは清々しい気分で家を出た私。
すると、行く途中で見慣れた男が立っていた。
「あ……。」
「よお。」
そこには村瀬が立っていて、低い、けど優しい声で彼はそう言った。
「おはよ…。」
「昨日はブレザーさんきゅーな。」
言いながら歩き出す村瀬。
そんな村瀬の横を歩きながら、私は返事を返す。
「そっちこそ…わざわざ届けてくれてありがとう…。」
「わざわざ届けたんじゃねぇし…。」
「え?」
私が驚いて足を止めると、村瀬もそれに続いて足を止める。
「てめぇが勝手にいなくなるから…」
そっぽを向いて言う村瀬に、私は少し笑みがこぼれた。
「死んでると思ったの?」
「………。」
「死なないわよ。」
「あ…そ…。」
「ねぇ村瀬。」
「あ?」
「ありがと…。」
そう言って私は駆け出した。
そんな私の言葉に、村瀬が優しく笑っていたことを、私は知らなかった。

