夢を見た。




私は今と変わらず高校1年生で、目の前には同じ制服を着た綾香が立っていた。




『綾香…?』



そう尋ねれば、彼女は優しく微笑んで頷いた。




『綾香…!』




走って彼女を抱き締めれば、ちゃんと彼女のぬくもりを感じた。




『綾香…。綾香…。』



『要…。ごめんね…。』



『綾香は悪くない。私が悪いの…。』



『…要は悪くない。もう。大丈夫だよ、要。』



パッと体が離され、綾香と視線がぶつかる。


その悲しそうな、けれどどこか優しい瞳をしている綾香と、村瀬の瞳が重なる。




『ふふ。私も要と同じ高校行ってたら、この制服着てたのかな?あーあ。あの時、ちゃんと現実受け止めて、逃げなければ良かった…。』




『綾香…。』




『後悔しても遅いんだけど…。だから、もう二度と要は死んじゃだめ。絶対に後悔する。それと、もうなにも背負わなくていいから。』




ニコッと微笑んだ綾香の顔は、とても優しくて、とてもあたたかくて、私の凍っていた心を優しく溶かしてくれたような気がした。





『要、笑ってよ。もうあなたをおびやかすものは何もない。私もこうしてずっと要を見守ってるし、なにより要には海斗がついてる。』




『え…。』




『海斗はああ見えてすごく優しくて、誰よりも人の事を考えてる。私の母の元にきた父は、海斗の父親でもある。』




『うん…。』




『1人で支えてきたの。海斗はお母さんを。』




あの冷たくて…
鋭い目をしていて…

本当は…、本当は優しい瞳をしている村瀬…。



誰よりも孤独と不安、悲しみを彼は抱えていたんだ。





『要。海斗を救って…
そして、幸せにしてあげて?』




『え?』




『要。色々ごめんなさい。そしてありがとう。私を救ってくれたのは要なんだ。私本当に、海斗と居れたこと、要と出会えたこと。本当に、本当に、幸せだった。』




『あや…か…?』




涙を流し始める綾香に触れてみようとするが、決して触れられない。



もう。


終わりを告げている。





『要。ありがとう。』




『綾香…!待って!』




薄れていく綾香を掴もうとするけど、決して掴めない。




『綾香…!私も…私も幸せだった…!ありがとう!』




そう叫んで微笑めば、綾香も返すように微笑んでくれた。









ありがとう…






綾香…。