それから時が過ぎて4月。
入学式。
満開の桜並木道を歩きながら、新しい生活に不安を覚えながらも、重い足取りで学校へ向かった。
行く途中、電信柱の所で寄りかかっている男に視線を向ける。
私はその人物に、大きく目を見開いた。
『村瀬……海斗……。』
同じ制服を身にまといながら、彼は鋭い目つきで私を見ていた。
一歩、また一歩と、私との距離を縮める村瀬に、私は硬直した体をうごかせないでいた。
そして村瀬が私の目の前まで来たとき、彼は私にこう言い放った。
『てめぇは俺が殺すから、もう二度と死ぬんじゃねぇ。』
『え………?』
なに……言って…
『約束だ。』
そう言いながら、柄にも合わず彼は無理やり指切りをしてきた。
『破ったら、てめぇが死体だろうがなんだろうがのどに針千本ぶっさすから。』
ドスの利いた声が突き刺さり、パッと手を離される。
そして彼は黙って歩いて行ってしまった。
遠のいてく彼の背中を見つめていると、その背中がぼやけていくのが分かる。
『バカじゃ……ないの…?』
そんな言葉が行ってしまった彼に届くわけもないのに、私は消え入りそうな声でそうつぶやく。
『本当……だいっきらい!』
うっすらと浮かぶあたたかい涙はその言葉の裏返しを表したのか…
それでも私は自分の本当の気持ちに気付くことはなかった。
いや…
気付きたくなかったんだ……。

