意識がもうろうとする中で、私は重いまぶたを開けた。
そこには心配そうに私の顔を覗き込んでいる母の姿があって、
それでも私は何も思わなかった。
『かな…め…。』
泣き出す母を横目で見ながら、私は痛む体を起こして空を見上げた。
綺麗…だな…。
雲一つない青空が窓の外を覆っていて、しばらく見ているとそれがぼやけていくのに気がつく。
『お母さん…。』
つぶやいた言葉は呆れるくらいに震えていて、私は少し鼻で笑った。
嗚咽をもらしながら泣く母は聞こえるか聞こえないかの声で返事をする。
『なぁに…?』
『私…
死にたかった…。』
『要…。』
『お母さん…。私…汚されたんだ…。』
『…っ…。』
『要…。』
母とは違う、澄んだ優しい声が聞こえたような気がした。
『綾香…。ごめんね…。』
私はあなたさえも…
助けてあげられなかった…。
『綾香…。どうしてあなたが…
行っちゃったの…?
私も…私も連れて行ってよ…。』
綾香…。
あなたが背負う事じゃないのに…。
どうして…?
どうして…?
『戻って…来てよ…!
綾香…!』
ボロボロと流れる雫は、私の手に握られた一通の手紙に落ちてゆく。
そこには綺麗な字で
要へ
と書かれており、
彼女の最期の言葉がつづってあった。
“要へ
助けてあげられなくて、
自殺するまであなたを追い込んで、
本当にごめんなさい。
綾香”

