『おい。』
後ろから聞き覚えのある声が聞こえたけれど、私は振り向かずに前を見ていた。
『おい。もう消灯の時間過ぎてっぞ。』
ふとその声が隣で聞こえ、村瀬が隣にいるのがわかった。
『だから…言ったろ…?』
村瀬の優しい声とともに、私はあたたかいぬくもりに包まれていた。
自然と嫌ではなく、むしろ心地よくて、私は村瀬の胸にすがるように泣き崩れる。
『あいつは…お前の友達も汚したんだ…。』
『…わかって…る…。』
『ごめん…。わかってたのに…もっとお前を引き止めてれば…』
ぎゅっと抱き締める腕に力が加えられ、その手が震えていることに気がつく。
むら…せくん…。
『ごめんな…。本当に…ごめん…。』
『…っ…。わるく…ない…。村瀬くんは、悪くない。』
『うん…。』
優しく腕を離され、村瀬と視線がぶつかる。
『篠原…。』
『村瀬くん…。』
こぼれ落ちる涙は、止まることも知らずに洪水のように流れていて。
村瀬はそんな私をあやすかのように一晩中ずっと抱き締めていてくれた。

