冷たくて優しい先輩





「だろ。よく母さんと親父と三人で来たんだ。母さんはこの景色を見ると、元気になるって……ここんとこずっとお前、落ち込んでたし、少しでも元気になれるかなって思ってさ」




「先輩…」




「女子の気持ちとか分かんねーし、どうやったら元気出るかとか分からなくて。ここしか思い浮かばなかった」




先輩が優しく私の手を握った。



「ありがとうございます……すみません。こんな綺麗なところに連れてきてくださって……」



「また泣いてる」



私の涙を拭って、優しく笑った。

あの時見た、笑顔と同じだ。
優しい優しい笑顔だ。