翌日。
「はよっ!」
話しかけてきたのは同じ野球部の轟木。
珍しい苗字だったから一発でおぼえた。
「源、すげぇな!
1年で、スタメンだろ?まじ憧れるわー!」
「スタメンって決まった訳じゃねぇし。」
来週の金曜日から3日間、激戦区大阪への遠征。
金曜の放課後、夜まで練習してその後風呂入ったらすぐ出発。
だから、結局2日間の練習試合三昧ってわけだ。
そこで使い物にならなかったらそれこそ、本末転倒だ。
轟木だって良いバッターだ。
紅白戦では同じクリーンナップ打ってたし。
「轟木も、バッティングはすげぇいいじゃん」
「バッティング『は』な。」
轟木は笑いながら言っている。
でも、目は笑っていなかった。
そんな意味を込めて言った訳じゃねぇのに。
「ホント俺、バッティングだけなんだよ。
守備はすっげぇ下手くそなんだよな。」
「轟木ってポジションどこだっけ?」
轟木とは仲いいけど、野球のことあんまり話したことなかったかも。
俺は入部してすぐ1軍のベンチにはいった。
周りは先輩ばっかりだったから、1年のことなんか忘れてた。
先輩達に追いつこうって思ってて・・・。
でも俺・・・。
「俺はセカンド守ってる。内野だったらどこでもいいけど。
一応、2軍にはいってるから、まだマシな方だ。」
轟木はいつも笑顔だ。
悩みとか辛いこととかねぇのかな?
「1軍の源に憧れてる反面、俺だったら嫌だって思ってた」
「え?」
「お前、寂しいんだろ?」
なんで、それを・・・・。
「そりゃ、いくら先輩達が優しくたって、俺だって寂しくなる。
同学年の仲間がいなきゃ、寂しいんだよ。」
やべぇ、泣きそう・・・。
「でも、それを背負って試合にでるのが源だ。」
満面の笑み。轟木は心の底から俺を応援してくれていた。
ずっと、誰にも言えなかった悩み。
轟木は分かってくれていた。
こんな情けねぇ俺のことを。
「黒咲!源のこと、なぐさめてやって。
お前をなぐさめることは俺の役目じゃねぇよな!朔弥!」
おれのこと、朔弥って呼んでくれた。
素直に、嬉しい。
「そうだな、藍智。」
轟木藍智。俺の最高の心友だ。
これからも、俺と心友でいてほしい。
そして、一緒に試合に出たい!
一緒にクリーンナップを打ちたい!!
一緒に全国制覇したい!!!
だから今は、1年全員の思いを背負って頑張るんだ!