ガラガラ。
ここは父の病室。
「失礼します」
朔弥が丁寧に挨拶しながら入ってくる。
父は包帯で腕や足をまかれている。
お父さん・・・
私はおとうさんの手を握った。
「ただいま、今日は野球部の監督と会ってきたよ。
監督から、いろんなこと聞いちゃった。
お父さん、お母さんと結婚するために・・・」
涙があふれてきた。
ぎゅ。
かすかに、手を握り返された。
「お父さん?」
「祭吏?」
ガラガラ。
入ってきたのは看護師さん。
「祭吏さん?あと、彼氏さんかな?」
朔弥は軽く頭をさげた。
「あのっ父が、手を握り返したんです。」
「ちょっと変わって」
看護師さんは少し焦ったように父の手を握った。
「黒咲さん?黒咲さん?」
父に声をかけると父は手を握り返した。
「主治医、呼んできます。」
看護師さんは病室を出て行った。
「朔弥、朔弥も手を握ってあげて。」
「うん。」
朔弥が父の手を握るとその上から私が手を握った。
「お父さん?今、手を握ってるのは私の彼氏。
名前は源朔弥くん。お父さんと同じ桜葉高校の野球部。
ポジションはキャッチャー。1年でベンチ入り。
お父さんとそっくりだね。」
「こんにちわ。僕、祭吏さんとお付き合いさせて頂いてます。
挨拶遅れて、すみません。」
朔弥は、父に丁重に挨拶をする。
その言葉を聞いたようにまぶたが開いた。