「おはよっ!はい、チョコレート!」
「わあっ、トリュフだ!可愛い!私からも、はい、これ、」
「うわあ!ガトーショコラだ!おいしそー!」

今日はバレンタインだ。

私は友達と、友チョコを交換しながら、横目でチラッと、隣の席を窺う。

「おーい!高橋ー!お前今何個ー?」
「うるせぇ!まだ今日は始まったばっかりなんだよ!」
「へへっ、だっせー!」

隣の席で高橋君をからかっているアイツをチェックする。

「そういうお前はどうなんだよっ!」
「え?俺はこれからむちゃくちゃ貰う予定だから」
「……俺と同じじゃねーか!」

ふと、私の視線に気付いたアイツは、こっちに笑顔を向けてきた。

「お前、誰かにあげんの?」
「………」

私は一瞬迷うそぶりを見せてから、言った。

「…佐織でしょ?高美でしょ?愛子でしょ?紗耶香でしょ?……」
「あー、分かった分かった、お前ら女子同士なのによくやるね~」
「女子同士だからだよ~」

友チョコってやつ。そう言って、私は前を向いた、授業が始まっちゃう。


つまんねー奴ー、アイツは苦笑しながらそう呟いた。