sweet bitter valentine

次の日、学校に行くとアイツがいた。

私が教室につくと、高橋君が話しかけるのも構わずに、私の方にまっすぐやってきた。

「ちょっと話あるんだけど、いい?」
「やだ」
「はあ!?」
「やだ~、あんたが話とか…怖すぎる!」
「ばっ、俺は真剣にっ!」
「それが怖いんだって~」
「怖いのはお前だろ~」
「ちょっ、それ、ひどくない!?」

突如乱入してきた高橋君にツッコミをいれて、私は自分の席に座る。


アイツの隣の、神様からのプレゼントみたいな席……


「っ……高橋っ、余計なこと言うなよ!」
「え…?なにマジ切れしてんだよ…?」

高橋君、ナイス、心の中で小さくお礼を言う。

そうこうしている内に、チャイムが鳴って、授業が始まった。

アイツはやっぱり疑わしそうに私の方をちらちら見てきたけど、気にしない。



私は決めたんだ、友達でいるって、友達でいたいって思ったんだ。

私は、アイツの前で不覚にも涙を流してしまった後、アイツに渡すはずだったチョコレートを自分で食べることとなった。

アイツ好みに合わせたチョコレートは、私にはとっても苦くて、でもやっぱり、ちょっと甘かった。


それから数日間、アイツは私とゆっくり話をする機会を伺っていたけれど、私が話をする気がないことに気付くと、諦めたのか、私に話をしようと言ってくることはなくなった。

三月がきて、春休みがきて、新学期がきて、私とアイツは別々のクラスになった。

クラスが別れると、今まであんなにお喋りしていたのが嘘のように接点がなくなった。

廊下で会ったら、同じクラスだった時のようにお喋りしたり、からかいあったりするけれど、それ以外では顔を合わせることがなくなった。

高校三年生だったので、受験勉強が忙しくなって、その年のバレンタインは、友チョコも誰にも渡すことなく、忙しなく過ぎていった。