そばにあるもの



あ、茶髪くんだ………

「家どこ?」

『あ、こっち………』


私は思わず指さしてしまった。


「送ってく」

『いや!大丈夫だから、気にしないで?』

「実杏みたいなやつ、ほっとけない」


え、実杏って言った………?

私の名前知ってたんだ。


『じゃ、じゃあさ、名前教えて?』


先を歩く彼は、足を止めて振り帰って

「花村 廉 (ハナムラレン) はやく覚えろよ」

と、少し微笑んでくれた。



はなむら………れんくん………。

ツンツンしてるけど、本当は優しい人なんだ。

なんかその優しさが、あの男の子みたいだった。

胸がキュっと痛くなった。



『ありがと』

私は思いっきりの笑顔で言って、

彼のとなりに行った。